山田運送株式会社様

築いてきた道路交通安全の仕組みを、ISO 39001で会社の強みとして打ち出す

代表取締役 山田 英樹氏 代表取締役 山田 英樹氏

滋賀県大津市瀬田に本拠を置く山田運送株式会社は、大手繊維・素材メーカー向けの物流サービスを軸に事業を展開している。名古屋市にも営業所を持ち、従業員55名、車両27台という体制で、主に近畿・東海エリアで短距離・中距離の輸送に携わる。以前から道路交通安全を会社の最重要テーマとして力を入れてきた同社は、このほどISO 39001の導入に取り組み、2013年4月に認証を取得した。築いてきた道路交通安全の仕組みをベースにして、ISO 39001の仕組みをどう取り入れ、レベルアップを図っているのか。代表取締役の山田 英樹氏にうかがった。

Q&A

事業のなかで道路交通安全の占める位置づけをお聞かせください。

「安全は全てに優先する」と定め、日々、取り組みの深化を図っています。

交通事故は、その当事者すべてに不幸をもたらします。被害者とその家族の方にはかり知れない苦痛、損害をもたらし、運転したドライバー、その家族も不幸になる。物流事業に携わる者は、事故は絶対に起こしてはなりません。事故防止活動や従業員の安全教育の徹底は、物流を担う会社の経営陣の責務です。その強い思いを持って、私たちは「安全は全てに優先する」というスローガンを掲げ、何よりも重要な活動として道路交通安全対策を推進し、日々活動の深化に取り組んでいます。従業員には「安全第一、利益は第二」を徹底しています。安全なくして私たちの事業の継続はあり得ません。安全を継続することで事業を継続し、その結果利益も出てくるものだと考えています。

これまでの交通安全対策はどのようなものでしょうか。

創業以来の安全活動に、NASVAのコーチングプランを導入して、さらなる改善への道筋を作っていきました。

創業以来積み重ねた安全対策の土壌に立ち、継続的な改革を行ってきました。その一つが定例会議への全員参加です。当社では毎月第一土曜日には定例会議を行い、安全活動もその場で行ってきました。以前は業務のある従業員は不参加でしたが、2007年に私が社長就任してからは、その日は他の業務はすべてなくし、従業員全員が参加するように改めました。その後はこの定例会議を通じて、道路交通安全に関するビデオ鑑賞、ヒヤリハットの報告、KYD活動などをやっていました。

それが2010年から独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)のコーチングプランを受けて、さらに変わりました。NASVAとは運行管理者等指導講習会や運転適性診断などの場でつながりができ、安全対策のコーチングプランがあると聞き、導入したのです。まず指摘を受けたのが、中間管理職が育っていないことでした。私が前面に出て運営していた定例会議を、中間管理職に任せるように改めました。終了後にはNASVAのスタッフを交えた反省会を行い、ブラッシュアップを図っていきました。このコーチングプラン自体がPDCAのサイクルに沿ったものであり、社内でこのサイクルに沿った行動の習慣ができていきました。従業員からも積極的な改善提案があり、内容の精度と質が上がってくる実感がありました。従業員の改善提案の例の一つに、安全運転宣言ステッカーの貼付や停車時輪止めの常時実施などがあります。自分たちでこれを採用しようと言ってくれたのは嬉しかったですね。

ISO 39001の認証取得のきっかけ、目的をお聞かせください。

今までの道路交通安全の取り組みを当社の強みとしてアピールできると確信し、認証取得を決意しました。

以前から当社は、ドライバーの質や運送品質の良さを強調することで、対外的なアピールを図っていましたが、それらは実際の数値で示せない要素です。他社とどう違うの?と問われても明確に示せず、ジレンマを感じていました。そういう状況でNASVAの方からISO 39001の紹介を受け、これだ!と思いました。第三者機関に当社の活動状況を見てもらい、認証を受けることで事故の撲滅のために当社が具体的にどう取り組んでいるかを対外的にアピールできる、当社の強みとして打ち出せると確信しました。またNASVAからも当社の道路交通安全のベースがあれば、一から取り組まなくても十分に取得可能だという見込みを伝えられ、心強く感じました。そこでNASVAにコンサルタントとして入ってもらい、認証取得への取り組みを開始しました。NASVAは当社の実情への理解も深く、ともに進める姿勢を大事にしてくださったと思います。ISOだからこうでなければならないというのではなく、当社の体制には何がベストなのかを見出せる環境づくりをしていただけました。

キックオフから認証取得までのスケジュールを教えてください。

トータルで約10カ月間、運用開始から約8カ月間で認証を取得しました。

ISO 39001に既存の活動を落とし込むようにして進めました。当初の想定通りのスケジュールで進行できました。

認証までのスケジュール
2012年 6月 キックオフ
7月~8月 文書作成
9月 運用開始
2013年 1月 内部監査
1月 マネジメントレビュー
3月 ファーストステージ審査
4月 セカンドステージ審査
4月 認証・登録証の発行
マネジメントシステムの構築・運営体制をご紹介ください。

従来の社内組織系統を活かし、社内全体で迅速に効率よく動ける体制を敷きました。

ISO導入で事務局を置く会社もありますが、当社は既存の組織にマネジメントシステムの構築・運営体制を乗せることで対応しました。結果的に社内全体で迅速に効率よく動ける体制になったと思います。

道路交通安全マネジメントシステム組織図

RTS方針、RTS目標、RTS詳細目標をお聞かせください。

培ってきた基礎に立ち、深く掘り下げた目標、詳細目標の設定を追求しました。

安全運転宣言ステッカー安全運転宣言ステッカー

RTS方針は、別表(1)で紹介しています。

RTS目標、RTS詳細目標は、培ってきた基礎に立ち、深く掘り下げたものを設定するよう努めました。

RTS目標には「有責事故ゼロ」だけではなく、「安全規則違反ゼロ」を掲げました。当社独自に厳しく定めた安全規則を全社員に徹底するようにしました。

RTS詳細目標はより細かく、数値化の難しいものまで深く考慮して数値化するように努めました。「ハザードマップの整備」は、従業員、お客さま、警察それぞれの意見を収集して全社員が共有するハザードマップを月3件、必ず作成するようにしています。これにより注意喚起が常にできる会社であることを追求しているわけです。「ハザードマップの整備」には登録審査でストロングポイントが付きました。

「法定速度の厳守」もよく考えて数値化しました。これは現在100%守られているのですが、不測の事態で危険回避の観点から、速度超過せざるを得ないケースも想定されます。急な飛び出しや割り込みにとっさに対応し、加速しないと逃げられない状況があるかも知れません。ですからゼロにはしませんでした。だからといって危険回避の名目で、速度超過の常態化があってはなりません。その芽も摘む観点から月10件以内と定めました。

RTS方針(別表1)

当社は、『安全は全てに優先する』を基本方針とし、全社員団結してRTSに関する法令等を遵守し、事故撲滅に取り組みます。又、RTSマネジメントシステムを有効に機能させ、経営者を筆頭に全社員が『安全』の価値を深く認識し、交通事故による死亡者、重傷者の事故ゼロを目指し、RTSマネジメントシステムを継続的に改善し、更なる安全価値を創造します。

RTS目標

  • 有責事故ゼロ
  • 安全規則違反ゼロ
RTS詳細目標
RTS詳細目標 実施事項 目標
ハザードマップの整備 ハザードマップの作成 月3件
業務課協力会安全部会の活用による安全注意喚起 月1回会議に出席(原則RTS管理者)し、議事録にて社内展開 月1回
法定速度の厳守 一般道:60㎞、高速道:80㎞、原則として遵守 デジタコによる基準超え件数・月10件以内
アルコールチェックの徹底 乗務前・乗務後点呼時に確認 アルコールチェッカー(基準値0.00mg/L)による検出ゼロ
天災・悪天候時の運行規定の策定・運用 規定の作成・運用(運用=運行管理者による情報提供・指示) 点呼簿による確認(指示の回数/悪天候時の回数)・100%
ISO 39001の取り組みで苦労した点や工夫したポイントをあげてください。

安全教育ではマンネリ化を防ぐために、いろいろなアプローチを取り入れています。

初めてのISO導入でしたが、道路交通安全の基礎ができていたこともあり、戸惑いなくスムーズに取り組めました。

目標達成への施策のなかでは、安全行動計画に定めた安全教育のところでさらなる工夫を図っています。定例会議でNASVAのコーチングプランを取り入れた安全講習会を継続していますが、同じことの繰り返しではどうしてもマンネリ化して従業員も飽き、うまく伝わらなくなってしまいます。NASVAの専門家のノウハウを活用しつつ、参加型で飽きのこない講習会づくりを心がけています。

従業員に道路交通安全の取り組みを定着させる活動をご紹介ください。

従業員全員が理解した上で進めていくようにISO 39001の必要性を強く訴えました。

安全優先の意識という面では、当社の従業員は今までの活動を通じて徹底されています。ただISO 39001の導入に当たっては従業員の理解がなければ、うまくいかないと考えました。従業員の理解を得るために、交通事故が被害者や加害者の関係者の皆を不幸にすること、会社の責任として交通事故から従業員を守りたい、守るためにはISO 39001の導入が必要だということを何回も説きました。従業員の理解が得られ、同じベクトルで現場の力を集結させることができ、組織がうまく回っていきました。

ISO 39001導入によって、これまで得た成果をご紹介ください。

今までの活動内容を見える化できるとともに、従業員が組織を理解して会社をよい方向へ動かす体制ができてきました。

今までは疑問を持ちながら進めた活動があったのも事実です。ISO 39001に取り組み、何がうまくいっていて何が足りないかを明確に見える化でき、自信を持って改善を進められます。

またISOを知ることにより、従業員の組織に対する理解が深まったことも大きな成果です。当社はファミリー企業的な体質だったのですが、従業員が組織を意識し、経営陣の役割や責任を理解するようになって変わってきました。従業員が自分たちで取り組みたいことがあっても、それをうまく表現して推進することが難しい場合がこれまではありました。それがだんだんと経営陣に決断を促すにはどうすればいいか、組織でどう動けばいいかわかるようになり、従業員の目線から建設的な提案が生まれ、会社が動く体制ができてきたのです。

今後の取り組みの目標や展開をお聞かせください。

協力会社の安全への取り組み、スキルの向上も働きかけていきます。

常務取締役 兼 業務部長 山田 史郎氏 常務取締役 兼 業務部長
山田 史郎氏

当社では、500km以上の長距離輸送等で、協力会社に委託するサービスもあり、委託先にはドライバーと車両の固定を要請し、安全への意識向上を図っています。今後は、協力会社のトップを集めた勉強会や講習会、委託先ドライバー向けの勉強会を設けて、当社の考え方や取り組みの周知を図り、スキル向上につなげることを計画しています。利害関係者として同業者に道路交通安全マネジメントの活動を広げることを当社の課題として進めていきます。

メディアではトラックの事故がしばしば報道されますが、これではいけないと切に思います。運送・物流業界の各社が、ISO 39001の認証取得に取り組むなら、事故撲滅へ大きく前進すると思います。簡単に認証取得できるものではなく、努力が必要とされる規格だからこそ実効性が高い。仕組みは運輸安全マネジメントにも似通った部分がありますから、そこを切り口に取り組めばやりやすいでしょう。多くの運輸事業者に取り組んでいただき、業界全体で事故撲滅へ進んでいければと思います。

山田運送株式会社の概要

所在地 本社 滋賀県大津市瀬田
名古屋営業所 愛知県名古屋市港区
設 立 1980年11月
事業内容 貨物自動車運送事業・貨物運送取扱事業・配送センター事業・営業倉庫事業・産業廃棄物収集運搬事業・パーキング事業
車両数 27台
従業員数 55名(2013年1月現在)

ISO 39001 登録情報

登 録 2013年4月(JQA-RT0012)
登録活動範囲 貨物自動車運送事業に係る業務(安全運転管理体制、運行管理、事故対応)
関連事業所 本社営業所

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