岩田運輸株式会社様

50年以上の会社の歴史の中でよしとされていたことを改善するきっかけに

代表取締役 岩田 昌典氏 代表取締役 岩田 昌典氏

東海3県を中心に、建材、鋼材、自動車部品をはじめとする一般貨物の運送を手がける岩田運輸株式会社は、自社の道路交通安全の取り組みを見直し、安全の取り組みをかたちにすることを目的にISO 39001を導入した。同社の代表取締役の岩田 昌典氏に、ISO 39001導入の背景やマネジメントシステム構築の経緯、今後の展開についてうかがった。

Q&A

事業のなかで道路交通安全の占める位置づけをお聞かせください。また、これまでの交通安全対策はどのようなものでしょうか。

安全第一という認識はもっていたものの、体系的な活動にはなっていませんでした。

当社は過去に重大事故も経験しており、安全の位置づけは高いですし、そもそも安全なくして事業はできません。デジタルタコグラフなどの管理ツールも導入していますが、道路交通安全の確保は人が主体になって取り組んでいくものです。しかしながらドライバーへの指導や事故情報の共有化について、ルール化がなされていませんでした。そのため、指導の実施履歴や、事故情報の伝達がどのように行われ、ドライバーがどのように理解したかといったことについて本社では把握できていませんでした。

ISO 39001の認証取得のきっかけ、目的をお聞かせください。

運送業は具体的なものを提供しているわけではないので、安全の取り組みをかたちにしたいと考えました。

ISO 39001が発行される以前にどこかで見て、こんな規格があるのだと思ったことを覚えています。その後、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)からISO39001導入のお誘いをいただくまでは忘れていました。NASVAからのお誘いは複数回あったのですが、当初は費用面で躊躇しました。しかし、私は社長になって間もないということもあり、自分の会社をきちんと見るきっかけにしたいと考え直し、認証取得に動き始めました。当社の場合、交通事故というよりも荷役事故が多いのですが、事故報告書を荷主に提出したりするなかで、安全の取り組みはかたちにしにくいことを実感していました。運送業はメーカーのように具体的な製品を提供しているわけではありませんから、なかなかお客さまには品質の高さを伝えにくい部分があります。やはり安全の取り組みを、かたちにしたい。しかも、それは業界内だけで通じるものではなく、荷主さまに対してアピールできるものでなくては意味がないと考えました。

ISO 39001についてNASVAから説明を受けたとき、まさに私たちのためにあるような規格だと思いました。ハードルが高いとも感じましたが、すでに実施している項目も入っていましたし、これならやれるかもしれないとも思う部分もありました。

キックオフから認証取得までの流れを教えてください。

2012年9月にキックオフしました。審査を通じて具体的な改善点が指摘されたので、明確な目標をもって取り組むことができました。

キックオフは2012年9月、NASVAにコンサルティングを依頼し、年明けまでは月1回ペースで定期的にミーティングを重ねました。道路交通安全マニュアルの作成を進め、システムの運用を開始したのが12月です。

4月に予備審査を受けましたが、マニュアルなど文書類のあり・なしといった形式的な確認だけでなく、文書が実際の運用とどうつながっているかといった実質的な質問もいただき、ただ書類を揃えているだけではだめだということを実感しました。また実務に即した有効な指摘もいただくことができました。例えば、車両の管理台帳を作成していたのですが、車両の更新計画も盛り込んだらどうかという指摘をいただきました。私たちは道路交通安全のみに着目して資料を作成していたのですが、審査員がISO 9001やISO14001を熟知している方だったので、ISO9001にも通じるような指摘をいただくことができました。

4月末から5月初旬にかけて、認証取得範囲に想定していた豊田営業所、三好営業所、本社の内部監査を実施し、その直後にマネジメントレビューを行いました。その後のファーストステージ審査、セカンドステージ審査でも、毎回課題を明確に提示されたので、次までに何をすればいいのかを把握したうえで改善を進めることができました。

認証までのスケジュール
2012年 9月 キックオフ
9月~12月 準備期間(文書化など)
2013年 4月 予備審査
4月~5月 内部監査・マネジメントレビュー
5月 ファーストステージ審査
6月 セカンドステージ審査
6月28日 認証・登録証の発行
マネジメントシステムの構築・運営体制をご紹介ください。

運送業に特化している営業所と、それを管理する本社を対象にシステム構築を行いました。

倉庫などをもたずに運送業に特化している営業所ということで豊田営業所、三好営業所、それを管理する本社の3拠点、約50名を登録対象にシステムを構築しました。構築にあたっては、本社総務が中心となり、2つの営業所と連携を取りながら進めました。

RTS方針、RTS目標、RTS詳細目標をお聞かせください。

運送業は人が亡くなることのある仕事です。RTS方針には、「被害者にも加害者にもならない」ことを盛り込みました。

運送業は人が亡くなることのある仕事ですが、それは絶対にあってはならないことです。死亡者・重傷者ゼロを実現するには、こちらが被害者にならないことも重要です。当社の場合、実際、加害者になるよりも、被害者になることが多いのです。ですからRTS方針のなかに、「全社員が事故の被害者にも加害者にもならない」ということを入れています。大きい事故になれば被害を受けることも十分にあるし、交通事故をなくすことが目標であるならば、被害者にならないことは、どうしても考えのなかに入れておく必要があります。交通事故とは、朝元気だった人が、帰りは何も言わない人になってしまうことです。事故を起こせば、加害者になってしまうという思いはドライバーにもあるようです。しかし、被害者になる可能性があることもドライバーに知らせなくてはならないのです。

RTS目標では、交通事故件数の20%削減を目標にしていますが、被害事故も対象に含めたことで、ハードルが高くなっています。実際、信号待ちで完全に停車しているところに追突されたケースもあります。認証取得後の人身事故はゼロ件で、お客さまの構内での後退時の接触がほとんどです。また、道路交通安全とは違いますが、荷物事故も減っています。

道路交通安全マネジメントシステム組織図

RTS方針

岩田運輸株式会社は、輸送の根幹は安全であることを深く認識し、「安全は一人ひとりが責任者」を合言葉に経営トップを始め、全社員が事故の被害者にも加害者にもならないように、過去の事故事例に学び、関係法令、ルールの順守を徹底します。
また、道路をお借りして仕事をさせて頂いている立場を理解し、その恩に報いるように下記の方針に沿って輸送の安全の確保に努めて参ります。

  1. 道路交通安全に関する目標・詳細目標を設定し、道路交通安全マネジメントシステムを運用し、死亡・重傷事故の撲滅に努めます。
  2. 道路交通安全に関する関係法令や利害関係者の安全に対する要求事項を順守します。
  3. 道路交通安全に関する目標・詳細目標を達成するために継続的改善を行います。
  4. RTS方針は、全社員に周知するとともに利害関係者からの要求に応じて開示します。

2012年12月21日
代表取締役 岩田 昌典

RTS目標

  1. 道路交通衝突事故による死亡者及び重傷者の撲滅
    死亡及び重傷事故の発生件数を0件にする。
  2. 交通事故の撲滅
    【交通事故の定義】

    有責・無責及び人身・物損に関わらず、弊社車輌(リフトを除く)が当事者となった交通事故
    2012年度比20%減以下の発生件数にする。
  3. 10万キロ走行あたりの事故数削減
    2012年度比20%減以下の発生件数にする。
  4. 構内(駐車場含む)での事故数削減
    2012年度比20%減以下の発生件数にする。

RTS詳細目標

  1. 運転者教育の徹底
    年間教育計画に則った教育を毎月実施し、実施率を100%にする。
    運転適性診断結果による四半期教育の実施率を100%にする。
  2. 危険運転の排除
    デジタコによる安全運転評価Aランク(当社基準)を100%にする。
    車種別燃費を2012年度比5%増にする。
ISO 39001の取り組みで苦労した点や工夫したポイントをあげてください。

長い間に習慣化してしまったことを改善するために、覚悟をもって、管理者、ドライバーへの啓発を続けました。

当社は、社歴がそれなりに長いので、その間によしとされてしまったことが数多くありました。そういう部分を適正化していくには、それなりの覚悟が必要でした。管理者の理解を得なくてはなりませんでしたし、また管理者がドライバーに理解させることも大変だったと思います。

ISO 39001の認証によって会社を変えていけると考えたのは、外部の人に自分の会社を見せるわけですから、まずいことがあったら見せられないということでした。また、よくあるのが「これ、やろう」というかけ声だけで、なかなか実行しないケースです。今回は、いつまでに何をするかを決めて、NASVAに具体的なスケジュールを設定していただいたことで、改善のスピードが上がりました。また目標を数値化することで、積極的に取り組む動きも出始めています。以前から導入しているデジタルタコグラフについても、今までは基準がありませんでしたが、目標値を定めたことで確実に底上げができています。

従業員に道路交通安全の取り組みを定着させる活動をご紹介ください。

ISO 39001認証取得範囲以外の営業所でも、同様の仕組みで活動を進めています。

RTS方針を記載した「道路交通安全カード」を社員全員に配布しています。また、認証取得範囲外の営業所でも、同様のマネジメントの仕組みを構築しています。全社の安全会議では、関係者は同じレベルで議論をしていますし、事故件数の低減など、取り組みの成果が出始めています。

ISO 39001導入によって、これまで得た成果をご紹介ください。

運転者と管理者のコミュニケーションが強化され、真剣に意見をぶつけ合う機会が増えました。

デジタルタコグラフを使ってドライバーを指導していますが、1カ所でも危険行為が見られれば日報に書いてもらい、記録に残しています。これによりドライバーと管理者のコミュニケーションが増え、真剣に意見をぶつけ合うこともできるようになってきました。ISO 39001は、コミュニケーションの強化にも意義があるものだと実感しています。

マネジメントシステムを構築する以前の安全の取り組みは、どちらかというと現場主導でその場限りのものでしたが、現在は本社主導で体系的に進められるようになりました。ISO 39001が社内の共通言語になり、会社全体が一つの目標に向かえるようになりました。

今後の取り組みの目標や展開をお聞かせください。

現状はトップダウンで進めていますが、もっと現場からの声が上がってくるようにしたいと考えています。

本社総務課長 石垣 諭氏 本社総務課長 石垣 諭氏

現在の取り組みはトップダウン、管理者主導で進めていますが、現場からの声が上がってくるようになるのが理想です。そうすれば、さらに会社が変わってくると思います。一方、管理者は本質的な事故抑止につながる取り組みを強化していく必要があると考えています。例えばヒヤリハットについても、今は報告で上がってきた事例を共有化するレベルにとどまっています。今後は生きたデータをもとに分析を行い、事故抑止につながる説得材料にしていくことなどが重要だと考えています。

岩田運輸株式会社の概要

所在地 本社 愛知県名古屋市中区
営業所 5カ所
物流センター 2カ所
設 立 1962年
事業内容 一般貨物自動車運送事業、倉庫事業
車両数 111台(2013年8月1日現在)
従業員数 137名(2013年8月1日現在)

ISO 39001 登録情報

登 録 2013年6月(JQA-RT0018)
登録活動範囲 陸上貨物輸送サービス
関連事業所 三好営業所、豊田営業所

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