中日本高速道路株式会社様

「安全を何よりも優先する」という理念のもと、世界一交通死亡事故の少ない高速道路空間の提供を目指す

代表取締役社長CEO 金子 剛一氏 代表取締役社長CEO 金子 剛一氏

高速道路の建設、保全・サービス、サービスエリア関連の事業を手がける中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)は、2013年10月、道路管理者として世界で初めて(当機構調べ)ISO 39001の認証を取得した。お客さまの交通事故低減に向けて、同社がISO 39001を導入した背景やマネジメントシステムの特徴、今後の取り組みなどについて、代表取締役社長CEOの金子 剛一氏にうかがった。

Q&A

事業のなかで道路交通安全の占める位置づけをお聞かせください。

「安全を何よりも優先する」という理念のもと、「安全性向上3カ年計画」を着実に実行しています。

当社は、「安全を何よりも優先する」ことを経営理念に明記し、高速道路において世界一交通死亡事故率の少ない、安全・安心・快適な高速道路空間の創出を目指しています。2012年の中央自動車道笹子トンネルでの事故を深く胸に刻み、「二度とこのような事故を起こしてはならない」という深い反省と決意のもと、安全を最優先する企業文化や体制の確立に向けて策定した「安全性向上3カ年計画」を着実に実行しています。

これまでの交通安全対策はどのようなものでしょうか。

高機能舗装などのハード対策、お客さまへの安全啓発などのソフト対策を合わせて実施しています。また、渋滞対策も重要な交通安全対策です。

当社は道路の建設事業も手がけていますが、昨年新たに開通した新東名では、カーブや勾配を緩やかにするなど安全な道路の提供に努めています。また、営業中の高速道路においても、高機能舗装や強化型防護柵、導流レーンマークなどの整備を、交通管理者(警察)などと調整しながら進めてきました。こうした取り組みに加え、シートベルト未着用によるお客さまの車外放出や、脇見運転による停止車両への追突などによる交通事故も発生していますので、交通安全セミナーの実施やチラシの配布による運転マナーの向上などの啓発活動も行っています。

また、渋滞の緩和も重要な取り組みです。渋滞の渦中や末尾では多くの事故が発生しており、特に渋滞の末尾においては死亡事故など重大な事故が発生することがあります。渋滞緩和のために、付加車線の設置といったハード対策に加え、モバイル情報端末を活用した情報提供による渋滞の削減にも注力しています。こうした取り組みに加え、東名の岡崎地区や東名阪の四日市地区では現況の道路幅員を活用して並行する新東名や新名神の開通までの暫定的な対策とした3車線運用も実施しています。

今後はITS技術を活用し、高速道路と車の「路車間」や、車同士の「車車間」の情報連携を強化することで、さらに事故や渋滞の低減を進めていきたいと考えています。これには、道路管理会社である当社だけではなく、自動車メーカーや情報通信会社、行政など外部と連携した取り組みが重要になってきます。

ISO 39001の認証取得のきっかけ、目的をお聞かせください。

世界一交通死亡事故率の低い高速道路を目指すなかで、ISO39001発行のニュースを知ったことがきっかけでした。

当社では2011年度の経営計画策定に当たり、KPI(重要業績評価指標)を採用していますが、その1つの指標に交通死亡事故率があります。世界一低いイギリスの実績1.1(人/10億台・km)に追いつき、世界一交通死亡事故率の低い高速道路を目指すなかで、ISO 39001の規格策定が進められていることを新聞報道で知りました。そこで直ちに調査を行い、交通死亡事故削減に向けた重要な施策になるものと判断し、認証取得を決定しました。

認証取得までの流れを教えてください。

2011年から情報収集を開始し、2012年10月のシステム構築開始から約1年で認証取得にいたりました。

ISO 39001に関する調査を進めるなかで、規格の発行に向けて、一般財団法人日本品質保証機構(JQA)と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が事務局を運営していることを知り、2011年11月に両者からお話を聞かせていただきました。コンサルティングに関しては、当社グループの中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋に依頼し、NASVAのお知恵も借りながら、2012年10月のISO 39001の規格発行に合わせて資料の作成を開始しました。

2013年5月には、担当部署から社内の幹部にISO 39001の説明を行い、その後、本格的な運用を進めていきました。私を含め上層部の強い思いがあったので、関係部署への浸透もうまくいったと考えています。

認証までのスケジュール
2011年 11月 情報収集開始
2012年 10月 システム構築開始
2013年 5月 社内幹部・関係部署への説明会
7月 システム運用開始
8月 内部監査
9月 ファーストステージ審査
マネジメントレビュー
10月 セカンドステージ審査
認証・登録証の発行
マネジメントシステムの構築・運営体制をご紹介ください。

高速道路会社として、保全・サービス事業を認証取得範囲とし、それに合わせた体制を構築・運営しています。

当社には、高速道路ネットワークの整備を行う「建設事業」、高速道路管理・運営を行う「保全・サービス事業」、サービスエリア、パーキングエリアの営業等を行う「関連事業」の3つの事業がありますが、まずはお客さまの交通事故削減に最も関連する「保全・サービス事業」を認証範囲としました。今回のマネジメントシステムでは、私自身がRTS最高責任者を務め、保全・サービス事業本部長をRTS管理責任者とし、同事業本部のうち料金事務センターを除く7つのチームが活動を推進する体制を構築しています。なお、マネジメントシステムの構築に関しては、事務局として交通チームと企画統括チームの4名が中心となって推進しました。

道路交通安全マネジメントシステム組織図

RTS方針、RTS目標、RTS詳細目標についてお聞かせください

高速道路における死亡事故率の抑制を最重要目標とし、それを実現するために7つのチームがPDCAを回せるように目標設定を行いました。

RTS目標は10項目ありますが、一番重要なところは、KPIとしている「死亡事故率を1.1(人/10億台・km)以下にする」ことで、それを実現するための活動を進めていくかたちにしています。

まず、ISO 39001の要求事項に従って内部・外部の課題を抽出しました。次に、7つのチームの交通安全のための取り組みを、RTSパフォーマンスファクターに照らしながら重大性と可能性から評価し、さらにリスク低減対策案に対する優先度を乗じて総合評価とし、値の大きな10の項目を絞り込んでRTS目標・RTS詳細目標に落とし込みました。RTS目標・RTS詳細目標は、項目は同じですが、目標は5年先、詳細目標は1年先の目標達成に向けて年度毎に数値目標を定めています。また、高機能舗装の整備延長といった目標の管理だけでなく、それによってどれだけ効果があったかというところまで検証していこうとしています。

RTS方針(高速道路交通安全方針)

中日本高速道路株式会社は、安全を何よりも優先し、安心・快適な高速道路空間を提供することにより、地域社会の発展と暮らしの向上、日本経済全体の活性化、そして世界の持続可能な成長に貢献します。
この一環として、当社が管理する高速道路における交通安全の発生リスクを軽減する活動に積極的に取り組み、高速道路において世界一交通死亡事故の少ない、安全・安心・快適な高速道路空間を創出するよう努めて参ります。

  1. 事故の発生原因や発生箇所を詳細に分析し、効果的な事故防止対策を実施していきます。
  2. お客さまと協働して「安全・安心」を実現できるよう交通安全啓発活動をおこなうとともに、関係機関と連携した各種交通安全対策を実施していきます。
  3. 道路交通安全マネジメントシステムの要求項目に従い、手順等を明確にし、文書化されたシステムを構築します。
  4. PDCAサイクルにより道路交通安全マネジメントシステムを継続的に運用し、定期的な改善をおこないます。
  5. この道路交通安全方針は当社のグループ会社を含む社員のみならず、広く社会に公開し、周知します。

2013年7月4日 中日本高速道路株式会社
代表取締役社長CEO
金子 剛一

RTS目標(抜粋)

RTS目標 実施責任部署
要素(具体的施策案) RTS目標(最終年度目標)
料金収受、保守会社等への安全行動確認 ETCレーンにおける安全確認 企画統括チーム
立ち入り防止柵の破損による動物侵入を防止するための敷地管理巡回の実施 2017年度の巡回実施延長を84,803kmとする 道路・不動産管理チーム
安全業務実行委員会、 安全指導マネージャーによる安全啓発 2017年度までの今後5年間で安全啓発実施のモデル料金所を50箇所とする 料金チーム
料金企画チーム
高機能舗装の整備 2017年度までの今後5年間で高機能舗装を340km・車線整備する 保全チーム
強化型防護柵の整備 2017年度までの今後5年間で強化型防護柵を50km整備する 保全チーム
監視用CCTVの整備 2017年度までの今後5年間でCCTV設備の設置を93基整備する 施設チーム
トンネル照明の更新 2017年度までの今後5年間で照明設備の更新を79トンネルで整備する 施設チーム
KPIの管理 2017年度の死亡事故率1.1(人/10億台・km)以下にする 交通チーム
凹凸路面表示の整備 2017年度までの今後5年間で250km整備する 交通チーム
交通安全セミナーの実施 2017年度までの今後5年間で累積受講者数165,000人を達成する 交通チーム
ISO 39001の取り組みで工夫したポイントをご紹介ください。

当社のようなインフラ系の企業がどのような仕組みを構築すればいいか、模索をしながら進めました。

運輸業の会社がいちはやくISO 39001の認証を取得されていることは知っていましたが、私たちのようなインフラ系の会社の事例はなく、どのように進めていくべきか模索しました。一方、当社もISO 14001の認証は取得していましたので、ISOの規格の基本は変わらないだろうとも考えていました。そこで、私たちが今まで携わってきた交通安全の取り組みと、当社のISO 14001の仕組み、そしてNASVAから情報をいただいた運輸会社での交通安全の取り組み方法が、うまく組み合わせられるように工夫を重ねていきました。

また、RTS目標についてもしっかり検討しました。運輸会社では死亡事故ゼロの維持をRTS目標にされている会社があるかと思いますが、当社の場合、実際に死亡事故が発生していることもあり、負傷事故を含む総事故の低減にまでRTS目標を広げています。これは、負傷事故を含む交通事故の低減が、死亡事故の低減につながるためです。

ISO 39001導入によって、これまで得た成果をご紹介ください。

これまでの活動の意味を再認識し、交通安全は私たちの使命であるということを、強く認識できたと考えています。

ISO 39001の認証を取得したばかりですが、ISO 39001に向けて取り組むなかで、交通安全は私たちの使命であるということを、再認識したことが成果としてあげられます。

PDCAを回していく仕組みは、今回、確実にできたと考えています。当社では、事故発生原因の分析(P)や交通安全対策の実施(D)については、これまでも行ってきましたが、ISO 39001の導入によって、さらに、内部監査や死亡事故発生毎の調査等の監視活動の実施(C)、監視結果に対する改善(A)による継続的改善を図れるサイクルの確立を目指しました。また、CとAだけでなくP、Dについても、内外の課題から見直して、これまで行ってきた施策を評価し、そのうえで目標を設定したため、取り組みの意義を再認識することができました。

今後の取り組みの目標や展開をお聞かせください

交通事故の削減に向けて、外部との連携を強めていきたいと考えています。

ISO 39001を継続的に運用・改善していくことによって、当社の高速道路をご利用のお客さまの交通事故、特に死亡事故が1件でも減らせるように努めていきます。保全・サービス事業本部におけるISO 39001の活動効果を見極めてからにはなりますが、支社、グループ会社などへの展開も考えていきたいです。また、ISO 39001の導入によって、私たち高速道路のインフラ会社だけでなく、自動車メーカー、利用者、警察を中心とした行政とともに交通事故削減に取り組んでいくことの重要性を再認識しました。今後も一層の連携を図っていきたいと思います。

左から保全・サービス事業本部 交通チーム 本木 新氏、保全・サービス事業本部 交通チーム チームリーダー 前田 忍氏、保全・サービス事業本部 交通チーム サブリーダー 馬淵 一三氏 左から保全・サービス事業本部 交通チーム 本木 新氏、
保全・サービス事業本部 交通チーム チームリーダー 前田 忍氏、
保全・サービス事業本部 交通チーム サブリーダー 馬淵 一三氏

中日本高速道路株式会社の概要

所在地 本社 名古屋市中区錦
設 立 2005年
事業内容 高速道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理
営業延長 1,949km(2013年10月1日現在)
利用台数 186万台/日(2012年度実績)
従業員数 約2,100名
ISO 14001初回登録 2010年12月

ISO 39001 登録情報

登 録 2013年10月(JQA-RT0023)
登録活動範囲 高速道路の保全・サービスに関連する事業に係るマネジメント業務
関連事業所 保全・サービス事業本部

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