情報誌 ISO NETWORK Vol.23

JQA Business Frontline 製品含有化学物質管理の組合せ審査サービスを開始 - JAMP管理ガイドラインを活用

JQAでは、既存のマネジメントシステムの強化や、マネジメントシステムを経営にいっそう生かしたい組織のニーズに応え、複合審査や組合せ審査を実施しています。その一環として、このほどISO 14001、9001と製品含有化学物質管理との組合せ審査サービスをスタートさせ、第一号となる登録を行いました。サービス開始の背景と概要をトモト電子工業株式会社(福島市)の事例とともに紹介します。

左:審査事業センター 複合審査部 次長 垣生学 右:企画・推進センター 事業推進部 参事 三島通世

EUの製品含有化学物質の規制強化に対応

EUでは、2006年に「RoHS指令」、2007年には「REACH規則」が施行され、EU域内での化学物質の規制が強化されるようになりました。

その規制強化に対応するため、日本では、JGPSS(I グリーン調達調査共通化協議会)が、2005年、欧州に電気電子製品を輸出するセットメーカーの立場からサプライヤーに向けた製品含有化学物質管理ガイドラインを発行しました。また、2007年には素材メーカー、部品メーカー、セットメーカーによる業界横断団体であるJAMP(アーティクルマネジメント推進協議会)が、化学物質管理に関する独自の管理ガイドラインを発行しました。その後、2008年にはJGPSSIとJAMPのルールの共通化の検討が行われ、現在、JAMP/JGPSSIの管理ガイドラインを原案として、JIS化に向けた検討が進められています。

化学物質管理の第三者審査へのニーズにお応えして

JAMP/JGPSSI管理ガイドラインでは、製品含有化学物質を適切に管理するために、以下の4項目が必要です。

  • 自社製品の含有材料情報を正確に知る
  • データに基づく安全な使用方法、廃棄方法を顧客側に発信する
  • トレーサビリティの方法を確立する
  • 各国で規制している有害物質を使用しない、あるいは管理、削減する

サプライヤーおよびセットメーカーは、これらについてサプライチェーンの中での共通の管理の仕組みを作り、自社で評価して自己適合宣言を行うことになっています。しかし、各組織が持つ評価能力にはバラつきがあり、信頼性のある管理が実現できない可能性もあります。

また、大手セットメーカーでは、サプライヤーに対し第二者監査を実施していますが、監査受入の準備や企業ごとに評価基準が異なるなど、サプライヤーにとっても、多くのサプライヤーに対して第二者監査を実施しているセットメーカーにとっても、第二者監査は負担が大きいものとなっています。つまり、第三者機関が共通のルールに基づいて審査し、その結果を各セットメーカーで共用することができれば、両者にとって負担の軽減が図れます。

こうしたニーズに対応して、JQAでは、ISO 14001やISO 9001の審査と製品含有化学物質管理システム(CSPM)の審査を組み合わせて実施するサービスを開始しました。しかし、JQAがセットメーカーに代わって審査するだけでは、サプライヤーの負担は変わりません。ISO認証を取得しているサプライヤーならISO 14001やISO 9001と同時に審査を行うことで、負担を大きく軽減できます。また、経験を積んだ審査員が化学物質管理のパフォーマンスを通してマネジメントシステムを審査しますので、管理の仕組みが構築できているのか、第三者の視点から確認することができます。

セットメーカー固有の要求事項を付加した審査も可能

JQAは、JAMP管理ガイドラインの実施内容を要求事項として、次のような組合せ審査を用意しています。

  1. JAMP管理ガイドライン+ISO 14001
  2. JAMP管理ガイドライン+ISO 9001
  3. JAMP管理ガイドライン+ISO 14001+ISO 9001

また、JAMP管理ガイドラインに各セットメーカー固有の化学物質管理に関する要求事項を付加した審査も可能です。JQAは第一号となるトモト電子工業株式会社の審査で、NECグループで用いる製品含有化学物質アセスメントを付加した審査を行っており、将来的には業界統一的な化学物質管理基準に沿った第三者認証サービス実現を目指しています。

ISO 14001、ISO 9001に化学物質管理を組み込む

JQAが上記のような組合せ審査を行っているのは、規制されている化学物質の管理が、すでに運用しているマネジメントシステムを応用することで、有効に推進できると考えているからです。

図1、図2は、ISO 14001、ISO 9001による化学物質管理の例を示すものです。

(図1)ISO 14001による化学物質管理(例)

(図2)ISO 9001による化学物質管理(例)

まず、ISO 14001に基づくと、環境側面に適用される法令の順守方法などを確立しておきます。そして、製品に含有する化学物質の管理をどのように進めていくか、手順を明確にします。さらに、顧客要求事項の把握と対応、納入製品に関する情報の提供、製品・活動に関する利害関係者の意見把握などを、コミュニケーションを通じて実施することになります。

次に、ISO 9001では、事業に対する法令・規制要求事項を満たすことは当然のこととして、顧客要求事項を満たすことを、経営者がはっきり打ち出すことになります。そして、顧客関連プロセスや設計開発プロセスといった各プロセスで、製品に適用される法令・規制要求事項や顧客要求事項をもとに、製品仕様を確立します。次に、それを踏まえて、材料・部品の購買仕様や難易度に応じた供給者管理の方法を確立し、問題になる化学物質の混入リスクに応じた材料・部品の管理を実施します。顧客には、材料・部品の供給者や自社の情報にもとづいて、製品含有化学物質に関する情報を伝えます。

製品含有化学物質の管理は今後ますます重要になっていきますが、この管理を進めていくにあたっては、経営資源の効率的な運用という観点から、すでに運用中のマネジメントシステムの一部を特化させて対応するのが望ましいといえます。

最小限のコストで審査が可能に

JQAの製品含有化学物質管理の組合せ審査は、ISO 14001、ISO 9001の定期審査、更新審査と同時に行うもので、製品含有化学物質管理の部分を付加審査として実施します。

付加審査の工数は、ISO 14001、ISO 9001登録審査の2ndステージ審査工数の20%を基準としています。

JQAの組合せ審査サービスの目的は、化学物質管理をISO 14001、ISO 9001とうまく連携させ、管理の信頼性を向上させるとともに、セットメーカーやサプライヤーである組織の負担を出来る限り軽減することにあります。JQAは製品含有化学物質管理に関しても専門性を持った審査員が多数おり、充実した審査体制でサービスをご提供します。JAMP/JGPSSI管理ガイドラインへの自己適合宣言の信頼性向上と企業イメージの向上に向け、ISO 14001、ISO 9001と製品含有化学物質管理との組合せ審査をぜひご検討ください。