情報誌 ISO NETWORK Vol.24

巻頭特集 東北の登録組織インタビュー ISOマネジメントシステムを経営に生かして 三和鋼器株式会社

開発技術部門統括部長 兼品質管理部長 高橋 賢輝 氏 開発技術部門統括部長 兼品質管理部長
高橋 賢輝氏

営業部門、間接部門も参加した全社的取り組みで、トータルな品質向上に取り組む

各種鉄塔や鋼構造物などの設計・製作・販売等を行う三和鋼器株式会社は、市場環境と顧客ニーズに的確に対応するため、工場部門だけでなく営業部門、間接部門を含めた全社員が参加するQMS活動に取り組んでいる。活動の中核を担う仙台工場の開発技術部門統括部長兼品質管理部長の高橋 賢輝氏に、同社の品質マネジメント活動の概要と特徴についてうかがった。

設計・開発・製作・鍍金から販売、施工までを一貫して対応

仙台工場 仙台工場

三和鋼器は、北海道から東北、東日本地域を中心に、送電用・通信用等の各種鉄塔および付帯の保安装置、電車線鉄柱、道路標識柱他の鋼構造物について、設計、開発、製作、鍍金から販売、施工までを一貫して対応可能なことを特長として、電力、通信、交通などのインフラ整備に寄与してきた。また、非破壊検査技術や化学分析を適用した診断技術を整備し、経年した構造物の劣化状態を的確に診断して顧客先のアセットマネジメントに寄与するサービスも提供している。

高品質、短納期化をはじめとするお客さまのニーズに応えるため、鋼構造物の生産技術の高度化、多様化を図り、その成果として新たな市場も広がっている。たとえば、種子島宇宙センターのロケット発射台の両脇に建つ2基の多目的鉄塔は、三和鋼器が構造設計を行い製作したものだ。近年は、再生可能エネルギーとして注目される太陽光発電パネルの架台の設計・製作でも、堅強で軽量な製品の供給で実績をあげている。このほか、均一な熱伝導をもたらす「パワーヒートパイプ」を使用した屋根融雪、床暖房、ハウス栽培、乾燥機などの製品も手がけている。

品質、技術を客観的に示すためISOを導入

「送電用や通信用の鉄塔は社会のインフラを担う重要な施設ですから、立地条件や仕様に即した最適な設計を行い、求められる品質を安定的に提供することが基本になります」。高橋統括部長は同社の品質方針をこう説明する。

鉄塔に用いる部材は高強度で亜鉛めっき性に優れた鋼材性能が求められ、そのような材料は基本的に鉄鋼メーカーに特注する。加工した部材は万が一にも施工現場で組みあがらないことがないように、特殊構造の製品は工場でいったん組立検査をしてからめっき工程にまわす。特に高張力鋼やステンレス鋼の溶接技術や溶融亜鉛めっきの技術は、長年の使用環境に耐える鉄塔を製作するための重要技術であり、社員の力量の管理と向上が欠かせない。

電力会社の実施する工場審査制度など、送電用鉄塔製作で培われた三和鋼器の品質と技術力については、既存の顧客先から高い信頼を得てきた。しかし、主要顧客である電力会社の送電網の整備が進み新規設備投資が減少するなかで、新規顧客の開拓が必要になったときには、工場が保有する力量をどのように認めてもらうかが課題となってきた。

「取引先の携帯電話通信会社から、ISO 9001の認証があったほうがよいというお話があり、2007年に認証を取得しました」(高橋統括部長)。

三和鋼器のISO 9001登録は、仙台工場を中心に、本社、札幌、仙台の営業部門さらに地域法人の東北三和鋼器を含めた社員約170名を対象とする全社的な取り組みだ。しかし、ISOの導入当初は専門用語などわからないことが多く、既存システムのQMSへの適用では少なからず負担を感じたという。

「初めてJQAの審査を受けたときには、審査員の話す内容もわからないことが多く、私たち事務局担当者一同がパニックのようになってしまいました」。仙台工場品質管理部品質管理課 係長の佐藤 美之氏は、当時をそう振り返る。そのころは、ISOの取り組みが何のために必要か、規格要求との兼ね合いが理解できない社員も多かったという。しかし、事務局や内部監査員が先頭に立ってISOの目的の理解と啓蒙に努め、社員にもその意味が浸透してくると、ISOをわが事として自発的に取り組むように変わってきた。

「ISO導入当初はQMSの雛形に仕事の流れを当てはめるような状態で、事務局は審査のための資料作りに連日残業ということもありましたが、最近は業務のなかにISOの活動が自然に取り込まれているため、審査前でも特別な準備がほとんど要らない状況になってきました」(仙台工場品質管理部次長 玉手 一吉氏)。

毎月1回開催する品質管理委員会で部門ごとの目標達成状況等が報告され、改善のポイントが確認される。このため、マネジメントレビューも効率的に行えるようになった。

品質管理部 次長 玉手 一吉 氏 品質管理部 次長 玉手 一吉氏

品質管理部 品質管理課 係長 佐藤 美之 氏 品質管理部 品質管理課 係長 佐藤 美之氏

営業部門、間接部門も含めた全員参加のQMS活動

三和鋼器のISO 9001の取り組みの大きな特徴は、工場の設計・製造部門だけでなく、営業部門さらには総務、購買、経理などの間接部門も加えた全員参加の活動であることだ。

「他社に話を聞くと工場中心のQMSという例が多く、当社もそこまでやる必要があるのかと悩んだこともあります。しかし、お客さまの満足を得て競争力を高めていくためには、受注・顧客情報を担う営業部門から、工場、それらを支援する間接部門までが連携しなければならないと考えて、生産部門が主体というよりもクロスファンクション的に全部門を対象とするQMSにしました」(高橋統括部長)。

三和鋼器ではQMSの指標として、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)という基本項目に、技術力(Technology)と受注を加えた5つの項目(QCDT+受注)で目標を設定している。

たとえば、営業部門の指標は受注の拡大だ。製造部門ではコスト低減はもとより社員の技能向上のために資格取得や技能大会での受賞数を増やし、開発部門は受注拡大につながる新製品をどれだけ増やせるかが目標になる。間接部門の資材調達では仕入先の適切な選定と在庫管理の最適化、総務部門では教育計画の推進や間接費の削減を目指している。毎年各部門が目標設定する際には、受注拡大という最終目標に向けて部門間できめ細かなコミュニケーションが図られている。

全部門が目標の達成に向けた具体的な管理を行う過程で、今まで目に見えにくかったウイークポイントが浮き彫りになってきた。
「どの部門でも、頭の中では改善したほうがよいと思っていてもなかなか実現できない課題があります。当社の場合、顧客情報・ニーズを精度よくとらえレスポンスをよくすること、書類の種類・様式を合理的に活用していくことなど、それまで見えにくかった課題がISOによって顕在化し、ISO導入を機会に一気に改善を進めることができました」。

高橋統括部長はISOの効果を、そのように説明する。

「ISOの最大のメリットは、何といっても目標が明確化され継続的な改善が社内文化として根づいたことです。品質の追求が決して終わることがない活動であることを全社員が実感するようになってきたと思います」。

昨年3月11日の東日本大震災では、仙台工場でも事務所棟や溶融めっき設備の一部損壊などの被害に見舞われた。しかし、三和鋼器では倒壊・破損した鉄塔の調査、補修など、被災地域の復旧に向けた活動を直ちに開始した。現在も、原発周辺で避難地域の指定が解除された地域での鉄塔の調査業務を担当している。

三和鋼器は、電力会社の設備需要の変化による困難な状況を乗り越え、ISOを生かして経営内容の改善を図ってきた。今後も、地域に密着した活動により社会の発展に寄与する企業として、新たな発展を目指していく。

三和鋼器株式会社の概要

所在地 仙台工場 宮城県柴田郡柴田町(本社 東京都墨田区)
設 立 1949年3月
業務内容
  • 各種鋼構造物の設計・開発・製作・販売・施工
  • 送電用鉄塔、通信用鉄塔、電車線用鉄柱・鉄構、発変電所用屋外鉄構
  • 各種鉄塔用保安装置(墜落防止、昇塔防止他)
  • 道路標識柱など土木関連製品、その他鋼構造製品一般
  • 省エネ環境機器(パワーヒートパイプ)および関連製品
  • 各種鋼構造物の品質点検調査、溶融亜鉛めっき加工
ISO 9001初回登録 2007年6月

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