イーレックス株式会社様

GX-ETS、SSBJ適用義務化を見据えた開示への取り組み

イーレックス株式会社は、燃料調達から発電・電力小売までを一貫して手掛ける再生可能エネルギーのリーディングカンパニーです。
1999年の創業以来、電力市場の変化に対応しながら事業を拡大し、再生可能エネルギー事業の知見を活かして、東南アジアにも事業を広げながら国内外の環境対応と経済成長に貢献することを目指しています。
本インタビューでは、サステナビリティ情報開示の位置づけ、第三者検証の受審、当機構を選定した理由、そして今後の展望を伺いました。
(取材日:2026年6月)

経営企画部 サステナビリティ推進課 担当課長 北小路 崇亮 様(写真左)と
経営戦略部門管掌常務取締役付 担当部長(サステナビリティ推進担当)経営企画部 投資事業課長 梶野 弘尊
※会社名・所属・役職は取材日時点

経営企画部 サステナビリティ推進課 担当課長
北小路 崇亮 様(写真左)と
経営戦略部門管掌常務取締役付 担当部長
(サステナビリティ推進担当)経営企画部
投資事業課長 梶野 弘尊
※会社名・所属・役職は取材日時点

イーレックス株式会社は、燃料調達から発電・電力小売までを一貫して手掛ける再生可能エネルギーのリーディングカンパニーです。
1999年の創業以来、電力市場の変化に対応しながら事業を拡大し、再生可能エネルギー事業の知見を活かして、東南アジアにも事業を広げながら国内外の環境対応と経済成長に貢献することを目指しています。
本インタビューでは、サステナビリティ情報開示の位置づけ、第三者検証の受審、当機構を選定した理由、そして今後の展望を伺いました。
(取材日:2026年6月)

この記事の早分かり

GX-ETS SSBJ CDP気候変動
2030年以降対象の見込み

※2026年6月時点

  • 課題

    • 規制対応(GX-ETS、SSBJ)
  • 導入サービス

    • Scope1, 2, 3の技術支援・第三者検証を活用
  • 成果

    • 算定の精度と透明性の向上
    • データ管理体制の改善
    • 内部監査の力量向上

義務化が近づいてからでは間に合わない。早めの取り組みがメリットに

―――サステナビリティ情報開示に取り組むに至った背景課題認識について教えてください。

(梶野様)
当社はプライム市場に上場しており、2021年のコーポレート・ガバナンス・コードの改定が行われてから、TCFDをはじめとする気候変動に関する開示対応が必要になってきました。もともと当社としてサステナビリティ情報開示に十分手が付けられていたわけではなかったので、まずはそこに確実に対応していく。言ってしまえば、最初の発端は規制対応でした。ただ、当社は脱炭素に向けた事業を行っている会社ですので、それにふさわしい取り組みを率先して進めていかなければならないとの認識を持っていました。

―――SSBJの適用義務化の時期がまだ検討段階であるなか、なぜこのタイミングで第三者検証を受けられたのでしょうか?

(梶野様)
理由は大きく3つあります。1つ目は、仮に義務化の時期が先だとしても、準備には時間を要するため、義務化が近づいてから始めてもおそらく間に合わない。今のうちから少しずつでも整備しておくべきだと考えました。 2つ目は、取引先や外部関係者からの信頼を維持・向上させる上で、サステナビリティへの積極的な取り組みが重要であると感じたためです。例えば金融機関との対話のなかでも、サステナビリティにどう向き合っているのかを聞かれる場面はありますし、主体的に取り組んでいることが、さまざまなステークホルダーからの評価につながっていると感じています。3つ目は、GX-ETSにおける排出量報告を見据え、先行して第三者検証を受審したことです。本格的な報告開始直前では、算定誤りやデータ不備への対応が難しくなることが想定されるため、事前に第三者検証を実施し、算定精度やデータ管理体制の向上に取り組みました。

―――こうした取り組みは、どのように全社へ広げていったのでしょうか?

(梶野様)
基本的には、私たちの部門、サステナビリティ推進課が中心となって、ボトムアップで進めていきました。全社に広げるなかで、皆、推進すること自体には賛成なのですが、「なぜそこまでやる必要があるのか」という声はありました。「どこまでお金や工数をかけるのか」という相場観の見極めは難しかったです。ただ、技術支援サービスを活用したことで、当社の今の立ち位置と、検証受審までのギャップが明確になりました。そこが見えたことで、このタイミングで検証を受けるべき理由について社内でも説明しやすくなったと思います。また、検証を通じて、現場での記録や証憑の整備がいかに重要かについても社内に説明しやすくなりました。言い換えると、検証があったからこそ、必要な教育や整備を社内で進める理由が明確になったのです。

“排出源の特定”から“内部監査”まで。実務に影響を与えた成果とは?

―――JQAを知ったきっかけ、および選定に至ったポイントについて教えてください。

(北小路様)
大手監査法人系企業や、外資系の認証・検証機関も含め、複数の候補先を検討するなかで選びました。選定の決め手となったのは、技術支援サービスの充実度です。海外での事業展開が進むタイミングでもあり、海外子会社を含めたGHG排出量の検証体制構築に向けた準備をどう進めるかという課題がありました。そのようななか、国内に加え海外拠点も含めて一貫した支援を受けられる点はJQAを選定する上で大きな魅力でした。

技術支援とは

当機構では、第三者検証に加え、技術支援のサービスも提供しています。技術支援では、制度に基づく基準の解説、本番の検証に向けた課題を発見するための模擬検証など、企業の制度理解や準備を支援するサービスを提供しています。

  • ※技術支援はご希望に応じて任意にご提供します。
  • ※技術支援は、GHG排出量の算定に係る一般的な情報提供(基準類の解説や事例の提示)と申請書類のレビューを行うもので、作成はお客さまに実施いただきます

―――実際に技術支援サービス検証を受けられて、率直なご感想はいかがでしたか?

(梶野様)
最も大きな気づきとしては、当社のみでは十分に把握できていなかったGHG排出源の抜け漏れを確認できたことが挙げられます。事務局としては、GHG排出源を網羅的に特定し算定を行っている認識でしたが、例えば試験用の小型バーナーや発電所に設置されている遮断器など、当初は十分に把握できていなかった排出源が存在していました。そのため、当社単独では補いきれない専門的な知見を提供いただき、排出源の特定精度を向上させることができた点は非常に有意義であったと考えています。

※遮断器:
電力設備で異常が発生した際に、電気の流れを遮断して設備や送電系統を保護する装置。絶縁媒体としてSF₆(六フッ化硫黄)を使用する機種があり、ガスの漏えいがGHG排出源となる。

(北小路様)
技術支援サービスは、GHG排出量算定や第三者検証を初めて実施する企業にとって、検証取得までのプロセスを体系的に理解できる非常に有用なサービスだと感じました。まず、現状の算定・管理体制を整理した上で、検証取得に向けたFit & Gap分析を実施いただきました。その結果を踏まえ、算定体制の見直し、算定マニュアルの再整備、モニタリング方法の再定義などを実施し、GHG排出量算定の精度と透明性を大きく向上させることができました。体制整備後には、実際のデータやサイトを用いた模擬検証も実施いただき、本番の検証で確認されるポイントや留意事項を事前に把握することができました。そのため、各拠点でも必要な準備を進めることができ、本番の検証にもスムーズに臨むことができました。  さらに、この過程で得た知見を社内に展開し、内部監査においても改善点や留意事項を指導できるようになったことは、大きな成果だったと考えています。一連のプロセスを経験したことで、次年度以降はより効率的かつ円滑にGHG算定・第三者検証へ対応できる体制が整ったと実感しています。

―――具体的に役立った指摘などがあれば教えてください。

(北小路様)
一例を挙げると、梶野が申し上げたとおり、当初の私たちは実際に使用した燃料など、目に見えやすい排出源を中心に捉えていました。しかし、技術支援や第三者検証を受ける過程で、発電設備に使用される遮断器など、GHGが封入されている機器についても排出源として確認すべき対象であることをご指摘いただきました。当社はバイオマス発電所を保有しているため、このような発電所特有の設備についても、一つひとつ確認いただき、業種特有の排出源を漏れなく洗い出すことができました。その結果、排出源の特定に対する考え方が大きく整理され、算定対象をより明確にすることができました。
また、測定方法や記録の管理についても、確認を進めるなかで改善すべき点が明確になりました。例えば、現地工場で木くずを燃料として使用しているケースでは、燃料使用量の測定方法や関連記録の管理状況についてコメントをいただき、データ管理の重要性を改めて認識するとともに、社内ルールを見直す契機にもなりました。このように、私たちが認識していなかった排出源の特定から、データ管理体制の改善まで幅広くご支援いただき、GHG排出量算定の精度と透明性を向上させる上で非常に大きな価値があったと感じています。

―――これから第三者検証の導入を検討する企業に向けて、アドバイスをお願いします。

(北小路様)
最初は「まずは自社だけで進めてみよう」と考える企業も多いと思いますが、実施した経験からすると、初期段階から技術支援を受けることをおすすめします。後から算定方法やデータ管理の考え方を修正するよりも、最初に基準に沿った体制を構築した方が、結果として労力やコストを抑えることができました。また、第三者検証はサステナビリティ部門だけで完結するものではありません。各拠点や事業部門、経理、調達など、多くの関係者の協力があって初めて成り立ちます。そのため、早い段階から関係部門と目的を共有し、「なぜこのデータが必要なのか」「なぜ検証を受けるのか」を丁寧に説明しながら進めることが重要だと感じました。そして、検証を実施するなかで指摘を受けることもありますが、ネガティブに捉える必要はありませんでした。第三者の視点で課題を明確にし、算定や開示の精度を高めていくための貴重な機会と考えることで、社内の仕組みづくりや継続的な改善にもつながります。今後はSSBJ基準への対応やGX-ETSなど、GHG排出量データの信頼性がこれまで以上に求められる時代になります。第三者検証は、そのための準備としても非常に有効な取り組みです。将来を見据えて、できるだけ早い段階から体制整備に着手することをおすすめします。

開示制度の変化、本質的な改善を見据えて

―――最後に今後の展望についてお聞かせください。

(北小路様)
当社の事業拠点があるベトナムでも排出量報告制度の導入・整備が進められており、今後は報告内容に対する第三者検証が求められる可能性があります。また、国内においてもSSBJ基準の適用やGX-ETSの本格運用などを背景に、サステナビリティ情報の信頼性や透明性に対する要求は今後さらに高まっていくと考えています。こうした環境変化を見据え、今回構築したGHG排出量算定・第三者検証の体制を基盤として継続的な改善を進めるとともに、将来的には海外子会社を含めた検証体制の構築や、検証範囲のさらなる拡大にも取り組んでいきたいと考えています。

(梶野様)
これまでは、GHG排出量の算定や第三者検証への対応を含め、主に情報開示への対応を目的として取り組みを進めてきました。今後は、開示体制の整備にとどまらず、GHG排出量の削減をいかに実効的に進めていくかという観点から、より本質的な改善活動にも注力していきたいと考えています。また、当社は海外における発電事業を通じて、雇用の創出や地域社会への貢献を図るとともに、その収益をさらなる事業投資へとつなげることで、主に東南アジア地域の脱炭素化に貢献していくことを目指しています。今後は、制度上求められる事項を開示するだけでなく、当社ならではの強みや社会的価値についても積極的に発信し、ステークホルダーの皆さまにより深くご理解いただけるよう努めてまいります。

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