情報誌 ISO NETWORK Vol.27

2015年版ISO 14001に関するよくある質問

• 2015年版のISO 14001規格は書店で買えますか。

  ISO 14001、JIS Q 14001とも一般財団法人日本規格協会（JSA）が運営するインターネットの規格・書籍等の検索・販売サイトで注文されるのが確実です。

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• 項番 4.1（組織及びその状況の理解）の「意図した成果」は、不変なものと考えるのでしょうか、または経営環境などによって変わるものと考えるのでしょうか。

  2015年版のISO 14001は、「環境マネジメントシステムを戦略的なレベルに引き上げる」観点から、組織が「意図した成果」は、経営的側面も考慮に入れることが期待されます。企業経営は絶えず変化が伴うものであることから、経営的変化に伴って「意図した成果」を変更する組織もあることでしょうし、変更せず不変である組織もあり得ます。この判断は、組織の考え方に大きく依存します。

• 項番 5.1（リーダーシップ及びコミットメント）の「事業プロセスへの環境マネジメントシステム（EMS）要求事項への統合」がどのようなことを要求しているのか、審査でどのようなことをどのように判断されるのかイメージできません。

  「 事業プロセスにEMS要求事項を統合する」とは、組織内の設計・開発、調達、人的資源、販売、マーケティングなど種々の事業部門で展開される本業のプロセスとEMS要求事項との関係を明確にして、本業の中でEMSを展開することを指しています。審査では、事業プロセスのどのようなところにEMSの活動が展開されているか、その関連付けを検証します。例えば、生産技術、生産計画などによって、生産活動が展開されている中で、環境に関する改善活動がどのように行われ、どういった効果が出ているかが、どのようにとらえられているかという視点から審査します。

• 項番6.1（リスク及び機会への取組み）で、取り組む必要があるリスク及び機会は、どのように考えればいいのでしょうか。

  この項では項番4.1（組織及びその状況の理解）、項番4.2（利害関係者のニーズ及び期待の理解）で決定された組織の状況や利害関係者のニーズや期待に伴う課題に優先順位をつけて、組織として取り組むためにリスク及び機会を決定し、計画を立てて実行することを求めています。これは、環境側面または順守義務、ならびにそれらに関連するリスク及び機会を考慮することで、取り組む必要があると決定した課題を、組織の環境マネジメントシステムの確立、実施、維持及び継続的改善において予防的に考慮に入れることになります。

• プロセスで対応するということは、部門名（例えば設計部）をプロセス名（例えば設計・開発プロセス）と変更する対応でよいでしょうか。

  プロセスとは、項番3.3.5で「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義されています。JQAでは分かりやすく「業務や活動の単位」としていますが、取りまとめたプロセスが部門と一致しているのであれば、そのまま変更することができると考えます。

• 環境マニュアルはどういう扱いにすればよいでしょうか。

  2004年版のISO 14001は、マニュアルの作成自体は要求していませんが、2004年版の項番4.4.4項で「EMSについて、主要な要素、それらの相互作用を記述したもの及び関連文書を参照できること」が求められており、大部分の組織が環境マニュアルを作成していました。2015年版では、マニュアルは「組織が必要と判断すれば、作成すればよい」という考えです。JQAでは、2015年版での審査においては、審査事前提出資料として「規格要求事項と部門（プロセス）及びプロセスと部門のマトリックス」を提出いただきます。マニュアルを作成されている場合は、補完文書として提出していただきます。マニュアルを整備される際は、2015年版へのギャップ分析をしていただき、不足している部分を補強しながら作業を進めるようご検討ください。

• 項番8.1（運用の計画及び管理）の「プロセス」は、2004年版のシステム体系にある「手順」を読み替えたものと理解していいですか。

  ISO 14001：2004年版では「何を、いつ、誰が・・」という手順を体系化した環境マネジメントシステムの確立が求められていましたが、2015年版では「何のために、何をする」を明確にした「プロセス」を含む環境マネジメントシステムの確立が求められています。加えて、2015年版は「リスク及び機会への取組み」が強化されており、2004年版との間の運用に差異が出てくる部分があるものと思われます。全ての「手順」を一括して「プロセス」と読み替えるのではなく、現在お持ちの手順を個々に見直すことをお勧めします。

• 項番 8.1のライフサイクルの視点に従って行う事項（a)～d）の対象となるプロセスは外部委託したプロセスと考えていいですか。

  項番8.1のa)～d)は、組織内のプロセスや、組織の上流（サプライチェーン）および下流（製品・サービスの提供に伴う物流、販売、使用から最終廃棄に至る流れ）に対する管理や影響を及ぼす対象にライフサイクルの視点を考慮することを求めているものです。これらの管理の対象は、外部委託したプロセスに限定するものではなく、組織内のプロセスも含まれます。

• 項番9.1（監視、測定、分析及び評価）で求めている監視、測定、分析及び評価の対象となる範囲はどう考えたらよいでしょうか。

  2015年版のISO 14001では、環境方針や環境目標など、組織が意図した成果を達成することを確実にするために、組織が必要とする監視及び測定の対象を決定し、その結果に応じてEMSのパフォーマンスを継続的に改善するための処置につなげることを意図しています。したがって、監視、測定の対象は、組織が意図した成果を達成するために計画した活動をどの程度実行し、達成したかを判断することができるように決める必要があります。