
製品やシステムの重要な要素である「信頼性」は、しばしば「安全性」と混同されます。しかし、両者は似て非なる概念であり、その違いを正しく理解することが事故防止や品質向上の第一歩となります。本記事では、信頼性と安全性の定義の違いから信頼性の考え方を取り入れた規格の紹介、設計段階で押さえるべきポイントまでを分かりやすく解説します。
信頼性(Reliability)と安全性(Safety)は、類似して語られることが多い用語ですが、規格上の定義は大きく異なります。 信頼性とは、「アイテムが、与えられた条件の下で、与えられた期間、故障せずに要求どおりに遂行できる能力」(JIS Z 8115:2019)と定義されています。 一方、安全性(Safety)は、「許容不可能なリスクがないこと」(JIS Z 8051:2015)と定義されており、機械やシステムが正常に動作している状態だけでなく、故障や異常が発生した場合においても、人命や社会に対して許容できない危害を与えないことに着目しています。 このように、信頼性が「故障を起こさずに機能を果たすこと」を目的とする概念であるのに対し、安全性は「故障や異常の発生を前提とした上で、危害を防止すること」を目的とする概念であると言えます。
信頼性の向上は、故障せずに主たるタスクを実行し続けることで安全性の確保に寄与する要因の一つと言えます。しかし、信頼性を向上させたからといって、安全性が必ずしも確保されるわけではありません。その典型例が、「合理的に予見可能な誤使用」による不安全事象です。これは、製造者が意図した使用範囲外であっても、現実的には起こり得る誤った使われ方によって発生する事故を指します。このようなケースでは、いくら製品自体の信頼性を高めても事故を完全に回避できない可能性があるため、「合理的に予見可能な誤使用」を含めたユースケースを想定し、リスクアセスメントを実施することが重要となります。
信頼性工学の考え方を体系化した機能安全規格では、「安全関連系が安全機能を果たしてくれるか」を信頼性の観点から定量的に評価する考え方に加え、冗長化、フェールセーフ設計、診断機能の導入といった手法が求められています。これは「故障ゼロ」を目指すのではなく、「深刻な危害が生じないように一定の信頼性を確保する」ことを保証するためです。
つまり、安全性の確保には、単なる高信頼性の延長線ではなく、リスクを許容可能な水準へ制御するための工学的アプローチが求められると言えます。

一般的な製品では、製造工程の管理や検査の徹底により一定の品質を確保していきます。しかし、信頼性と安全性は製造工程の管理だけでは十分に担保できません。信頼性と安全性を製品の特性として実現する必要があります。そのため、「信頼性および安全性を設計段階で明確な要求事項として定義し、設計仕様書に落とし込む」ことが不可欠です。高信頼性部品の選定や冗長化設計といった信頼性向上策も、設計要求として明確化しなければ製品に反映されません。また、リスクアセスメントで検討したリスク低減方策は、電気・機械などの要求と同様に設計要求として扱い、設計仕様書へ明確に反映させる必要があります。サービスロボットを例にすると、接触による挟み込み防止のための隙間寸法、移動速度制御、人との衝突を避けるための障害物検知センサーの実装など、すべてが「要求 → 設計 → 実装 → 検証」というプロセスを通じて具現化されます。これにより、安全は技術者の経験や勘に依存するのではなく、組織として再現性ある形で確保できるようになります。事故を未然に防ぎ、社会から信頼される製品づくりのために設計要求の明確化と管理の徹底が重要です。
当機構では、設計時のリスクアセスメントや、さまざまな装置に搭載される機能安全への対応をはじめ、お客さまが安全・安心な製品開発を実現できるよう、幅広い支援サービスをご提供しています。お悩みやご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。