情報誌 ISO NETWORK Vol.22

[特集]これからのISO 9001を考える

JQAのマネジメントシステム部門は、1990年に最初の認証を行い、今日までの総認証件数は22,600件余りに達しております。20余年にわたり認証を維持されているお客さまをはじめ、関係者の皆さまの永きにわたるご支援に深く感謝申し上げます。

わが国では、1990年前後からISO 9001が輸出型製造業に浸透し、その後品質システム認証としてさまざまな業種で普及し定着してまいりました。ISOの認証取得が取引条件や入札条件とされたこともあり、建設業やサービス業など多岐にわたる業種と幅広い規模の組織で認証取得が広がり、いわゆる「ISOブーム」ともいわれる現象が起きたこともありました。しかし、2005年ごろを境にISO 9001の認証件数は横ばいから減少傾向に転じております。景気の低迷や、認証組織の不祥事などを契機とした認証制度およびシステムの有効性に対する信頼感の低下があいまって、ISO 9001は一つの転機を迎えております。

こうした中、ISO/TC 176(品質管理技術専門委員会)のサブコミッティでは2015年に向けて大幅な見直しが行われようとしています。手はじめに、昨年10月から本年2月には、ISO本部のウェブサイト上で世界各国のISO 9001ユーザーの声を詳細に収集する「ISO 9000ファミリー・ユーザー・サーベイ」が行われました。

ユーザー・サーベイの集計分析はこの6月に発表される予定です。一方、JQAでは独自に認証組織限定サイトを通じて調査を実施し、ISO 9001ユーザーとしてのお客さまの問題意識をうかがいました。

この特集では、JQAの調査に見るユーザーの問題意識、ISO/TC 176における次期改定の論点に加え、審査現場で見られる注目の動きとJQAの取り組みなどの紹介を通じて、ISO 9001認証について考えていきます。

※初回認証件数の合計値

理事 審査事業センター所長 森廣 義和

規格改定への期待は、「事例を交えるなどで分かり易く」、「他規格との整合性」。一方、大きな改定を望まない層も―。

ISO NETWORK編集部では、JQAのISO 9001認証取得組織にメンバーズサイトを通じて、改定作業が始まったISO 9001に対する問題意識をうかがい、わずか4日間で218件の回答をいただきました。規格改定に関しては、事例を交えるなどで分かり易くしてほしい、他規格との整合性の向上に対する期待が多かった一方、大きな改定を望まないユーザーも相当数を占めました。認証機関への期待では、審査周期延長・費用軽減と、(システム改善のための)有効な指摘を望む声が多く寄せられました。このほか、自由記述(フリーアンサー)方式の回答にも多岐にわたるご意見をいただきました。

その調査に回答いただいた組織の中から、株式会社安川電機 モーションコントロール事業部(埼玉県入間市)とSMC株式会社 草加第一工場ほか(埼玉県草加市)の2社に追加取材に応じていただき、次ページにインタビュー記事を掲載しました。また、7ページには次期ISO 9001について寄せられたフリーアンサーのご意見を規格、審査、その他に分けてご紹介しました。

JQAメンバーズサイトで行った調査集計結果

今後ISO 9001の規格および認証制度(第三者機関による審査登録)を利用するにあたり、これからのISO 9001規格と審査、認証制度に対してどのようなことを期待されますか。

規格に期待すること

大きな改定を望まない 11、事例を交えるなど分かり易くしてほしい 31、他規格との整合性の向上 23、パフォーマンスが向上する、利益に直結する要求事項に 20、各規格の共通部分はまとめ、規格は固有の要求事項に特化させる 4、その他 さらに品質に特化した規格・リスクアセスメントを取り入れる・文書化を必要最低限にしてほしい

認証制度・認証機関に期待すること

審査員の力量のバラツキを解消してほしい 11、審査周期の延伸または費用の軽減 26、有効な指摘、改善の機会を与えてほしい 20、経営者に気づきを与える審査 9、有効性を評価(数値化)するサービス 8、その他 ベンチマーク評価・規格改正情報の連絡・認証機関の力量評価と情報公開・成熟度審査・認証の信頼性の向上

【調査概要】調査期間:2011年2月1日(火)~4日(金)、対象:JQAでISO 9001を登録している組織、 有効回答数:218