情報誌 ISO NETWORK Vol.25

FSSC22000 認証取得事例 東洋製罐株式会社 全社で共有する「活きたシステム」で業績向上への推進力を高める -食品安全マネジメントシステムFSSC 22000への取り組み

常務執行役員 生産本部 副本部長 水戸川正美氏 常務執行役員 生産本部 副本部長 水戸川 正美氏

東洋製罐株式会社は、缶、ペットボトル、プラスチックボトル、パウチ等の包装容器メーカーとして市場をリードしている。食品と緊密にかかわる同社は、2012年11月に本社と設計開発部門に加えて琉球製罐株式会社を含む14の製造サイトで食品安全マネジメントシステムFSSC 22000の認証を取得した。常務執行役員の水戸川 正美氏、品質保証部長 藤田 智志氏、品質保証部 課長 桑原 友明氏に、FSSC 22000への取り組みを通じて得た成果や手応えと今後の展開などについてうかがった。

活きたシステムをつくり、活用しよう -トップの強い意志を反映

東洋製罐がFSSC 22000を導入したきっかけは、GFSI承認規格の認証を取得してほしいという顧客からの要請であった。2010年8月頃から検討に入った。水戸川 正美常務執行役員はこう語る。

「食品業界は当社の主要顧客ですが、各社が食品安全マネジメントシステムを導入した食品安全保証体制に移行しつつあります。食品安全はフードチェーン全体で達成されるものですから、私たちもその一員としてGFSI承認規格のFSSC 22000を導入し、お客さまからの信頼を厚くしようと考えました」。

直接の契機はそうであっても、その背景には同社の創業以来の理念に基づいた絶えざる取り組みがあった。

東洋製罐の創立は1917年にさかのぼる。当時は缶詰の生産者が缶製造と充填を家内制手工業的に一貫して行っていたが、同社が日本で初めて自動製缶設備による製缶を開始したことで、缶詰業界の生産工程から缶製造を切り離して担うようになった。当時からの企業理念は、同社の根本方針や従業員服務精神にうたわれ、「顧客・人類社会のために奉仕の精神で事業を行うこと」「顧客の共同製罐工場として高品質かつ低コストの製品を迅速に供給すること」などが明確にされている。

「95年間、当社は食品安全ノウハウを記述されていない暗黙知として積み重ねてきました。この機会にその暗黙知を形式知として文書化し、後世に受け継ぐ意図もありました」(水戸川常務執行役員)。

顧客の要請に応えるだけなら対象工場だけで取り組む道もあったが、東洋製罐では間接部門も含め全社、全事業所を念頭において認証取得に進んだ。そこには、包装容器業界のリーディングカンパニーという自負もあり、あらゆる顧客への責任を負うという観点もあった。

藤田 智志品質保証部長は力を込めてこう語った。

「マネジメントシステムは認証を取得することが目的ではありません。自社のための仕組みとして活用するのが目的ですから、FSSC 22000も全員で取り組む以外の選択はありませんでした」。

※GFSI:Global Food Safety Initiative(国際食品安全イニシアチブ)

全社展開へ―重視した社内コミュニケーション

生産本部 品質保証部 課長 桑原友明氏 生産本部 品質保証部 課長
桑原 友明氏

生産本部 品質保証部長 藤田智志氏
生産本部 品質保証部長
藤田 智志氏

FSSC 22000の導入にあたり金子俊治社長から「業績への貢献をめざし、活きたシステムをつくって活用しよう」という強い意志と方針が示されて、2011年7月からGFSI事務局を推進役として本格スタートした。

全社統一の食品安全マネジメントシステムの導入では、特に社内コミュニケーションを重視した。桑原 友明品質保証部課長はこう紹介する。

「食品安全は事業の基本であることを考慮し、本社の決定事項を全事業所に行き渡らせ、部門横断的な共有を図りました」。

専用データベースでスケジュールや資料を掲示して皆が見ることができるようにしたほか、セミナー映像をDVD化して全国各事業所の担当者へ発送し、現場での理解促進に役立てた。社内報で特集を組み、また規格のポイントを簡素にまとめたGFSIニュースというポスターをほぼ月一回作成し、各事業所の人目につく場所に掲示した。このように、現場で働く従業員の一人ひとりがFSSC 22000を理解できるようダイジェスト資料を充実させると同時に、より高度で専門的な情報を求める従業員のための資料も情報システム上のデータベースに掲載した。テレビ会議や連絡会議でのフォローも行い、事業所間の一体感の醸成や、現場での疑問点の解消に努めた。

トップの意志を現場の全員で共有することにも取り組んだ。経営層を対象にしたセミナーを繰り返し実施するとともに、コンサルタントから提案された新しい定義の5Sを意識づけの基礎に置き、従業員への定着を図った。

「使い古した感のある5Sですが、ここでは整理・清掃・整頓・清潔・しつけの順でストーリーが設けられ、ものづくり、仕事、知識・技能の3項目にわたる今までにない広がりがあるものです。製造現場だけでなく間接部門の仕事にも活用できる5S活動として、全社員が食品安全と品質の向上、効率化を果たし事業に貢献するアプローチ方法になっています」(藤田部長)。

納得いくまでの議論で、本当に役立つ手順に

東洋製罐が取り組んだのはFSSC 22000のうちPAS 223という食品包装材メーカー向けの前提条件プログラムに基づくものだ。同社では、PAS 223の解釈が十分にこなれていないことに気づき、審査期間中に審査員と議論を深め、容器包装事業にふさわしいレベルの着地点を入念に求めた。

「食品製造業向けのPAS 220の視点をそのまま包装容器に当てはめているように感じる部分があり、そこは納得がいくまで議論を交わしました。それにより食品包装材の要求事項の解釈が熟成されていくと期待しています」(桑原課長)。

「規格にあるからと杓子定規に受け入れるのではなく、実際の運用の場面で必要なことを納得がいくまで議論したことで、本当に役立つ仕組みをつくることができました」(水戸川常務執行役員)。

社員の意識改革と「活きたマネジメントシステム」への自信

取り組みの効果として、対外的には安全で高品質な製品を製造供給できることが客観的に証明され、顧客の安心感、信頼感につながることが挙げられる。また会社のイメージや認知度のアップへの期待もある。一方、社内的には食品安全のハザードが明確になり、効果的な食品安全の仕組みが構築でき、クレーム対応の迅速化と予防対応が整うことが見込まれる。また統一した管理標準ができることで生産性向上や不良品削減にもつながる。従業員にとっては5Sの徹底や食品安全の意識改革が進み、経営層は理念や方針を生産現場へ広げられる。

「多くのメリットがありますが、何と言っても大きいのは2012年4月の運用開始から7カ月で認証を取得できたこと。従業員一同が「やらされ感」なく懸命に取り組んだ成果です。マネジメントシステムによって業務の改善が図られることを皆が実感し、自信をつけてきたと感じています」(水戸川常務執行役員)。

東洋製罐は、当初2014年頃にISO 9001、ISO 14001と食品安全マネジメントシステムの統合を目標に動き出していたが、今回の取り組みで得た会社としての手応えと従業員の自信は大きく、現在はマニュアルなどの整理も道筋がつきつつあり、一年繰り上げた2013年のシステム統合が現実的になってきた。

その先には経営戦略とマネジメントシステムの一体化という目標がある。

「従業員が会社のルールに従って日々の業務に励むことが、意識せず自然に認証取得につながり、業績に貢献できることが理想の姿。その高みを目指したいですね」(水戸川常務執行役員)。

東洋製罐株式会社の概要

所在地 東京都品川区東五反田
創 立 1917年6月
事業内容 金属、プラスチックとそれらの複合材料を素材とした包装容器の製造・販売、食品関連機械、包装システムの販売および技術サービス
ISO 9001初回登録 1999年
ISO 14001初回登録 1999年
FSSC 22000初回登録 2012年11月

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