ISOマネジメントシステム規格は、章立てや要求事項、用語・定義が異なるため、規格間の整合が取りにくく、ユーザーに混乱をもたらすケースがあった。また、複数のISOマネジメントシステム規格を導入・利用する組織にとっては、それらを統合して運用することが容易でないこともあった。
ISOではユーザー調査などで明らかになったこれらの課題解決のために、2006年から2011年にかけて、整合性を高めるための議論※1を行い、2012年2月にISOマネジメントシステム規格共通要素を承認※2した。
その結果、それ以降制定あるいは改定されるすべてのISOマネジメントシステム規格は、原則としてこの共通要素を採用して開発することが義務づけられた。すでにこの共通要素は事業継続(ISO 22301)、道路交通安全(ISO 39001)、情報セキュリティ(ISO/IEC 27001)などの分野で採用され、今後ISO 9001、ISO 14001等へ採用されることが決まっている。
ISOマネジメントシステム規格に共通要素を採用することは、既存の規格の構造を変えることになるので、大幅な変更にも見えるが、実際はそうではない。目的や考え方は大きく変わることはなく、共通要素の採用によって、PDCAの関係を整理し、組織のマネジメントシステムがより効果的に運用されることを目指している。
ISOマネジメントシステム規格共通要素とISO 9001、ISO 14001など各規格の関係は、大木の幹と枝葉に例えられる。幹となる共通要素で共通の章立て、要求事項、用語・定義を提供し、各規格固有の要求事項が枝葉として付加されるイメージとなる。(図1)
共通要素を採用することによって、すべてのISOマネジメントシステム規格の章立ても前ページの表1のように統一される。共通要素の採用によって各ISOマネジメントシステム規格の要求事項は多くの部分が共通となり、用語・定義を含めた全体の整合性が高められる。
規格間の相違は、個々のマネジメントシステム分野の特別に必要とされる要求事項について認められ、共通要素に追加される。例えば改定が進められているISO 9001のCD(委員会原案)では、8章「運用」の共通の要求事項8.1項に、品質マネジメントシステム固有要求事項の8.2項「市場のニーズの明確化及び顧客との相互作用」、8.3項「運用計画プロセス」、8.4項「商品・サービスの外部からの提供の管理」、8.5項「商品・サービスの開発」、8.6項「商品製造及びサービス提供」、8.7項「商品・サービスのリリース」、8.8項「不適合商品・サービス」の要求事項が追加されている。
共通要素の各章は全体で右記のような関係で、PDCAを形成する。(図2)
複数マネジメントシステム規格の認証を取得している組織にとっては、ISO マネジメントシステム規格が共通要素を導入することで、以下の事項について効率を改善できマネジメントシステムの統合活用が容易になる。