例えばISO 9001とISO 14001を同時に運用している組織は多い。組織ごとにその運用のやり方はさまざまであり、規格ごとに運用するケースもあれば、マニュアルを統合して、重なる内容/事項を共通に管理している組織もある。
規格ごとに分けた運用を行う組織は、管理工数は2組織分になり、管理の手間が大きい。本来、組織の活動は1つであり、品質や環境で独立する活動にはなっていない。規格もまた、本来は組織の活動を効果的に進めるために、組織が主体的に活用する経営ツールである。ところが、規格の個別の要求事項に応えることが目的となり、マネジメントシステムの運用が、ともすると認証を取得するための活動に陥ってしまうケースもある。
複数の規格を統合して運用することはメリットが大きい。統合を進めることにより、わかりやすく、使いやすいマネジメントシステムを構築でき、スリム化できる。また、例えばISO 9001、ISO 14001を統合する場合、品質・環境という異なる視点を同時に持つことで日ごろの業務を多角的に捉えることができ、新たな改善活動につながるきっかけとなる。つまり、複数の規格の統合は相互作用、相乗効果を生み出すことができ、組織全体のパフォーマンス向上にもつながるだろう。
さらに維持・管理の手間やコストも削減できるうえ、受審回数を減らし、そのための準備や対応の負担も減らすことができる。審査工数の削減も図れ、審査費用も圧縮できる。
これまでは、規格ごとに章立てが異なるため、マネジメントシステムの統合を目指す組織にとっては、複数の規格間で同様の要求事項、異なる要求事項を比較するのが困難だった。マニュアルを統合し、管理の共通化に取り組む組織は、どのような章立てで統合していくべきか、悩みが大きかった。
今後の改定で採用される共通要素では、異なる規格であっても章立てが共通化しており、共通の要求事項と個別の要求事項を明確にでき、共通管理、個別管理の区別も容易になる。マネジメントシステムの統合運用を目指す組織には、導入負荷が軽くなると期待できる。
また、複数規格のマネジメントシステムの適用範囲は、規格によって組織の意図が違わなければ、基本的には同じになることが見込まれる。
組織の運用の効率化が進めば、審査も効率化され、審査工数の削減にもつながっていく。
JQAでは、複数規格のマネジメントシステムを運用する組織に対して、従来、複合審査※1とIMS審査※2の2つのサービスを提供してきた。これらのサービスの提供による実績をベースに、複数規格の運用により相互作用、相乗効果などを発揮できるようステップ・バイ・ステップで統合レベルの向上を図っていただける「マネジメントシステム統合プログラム」というサービスを開発した。従来の複合審査、IMS審査は順次、このサービスへ一元化する方向で検討中である。
今後JQAは、統合の程度に応じて「統合ステージ1」「統合ステージ2」「プレミアム・ステージ」の3段階でそれぞれ判断指標を設け、ステップアップをサポートする。審査では、各ステージに足りない部分を気づきとして提供するほか、セミナー開催やホームページでの事例紹介など各種サポートメニューの提供を予定している。
「マネジメントシステム統合プログラム」の審査でJQAは、次の7つの判断指標をもとにマネジメントシステム統合の程度と統合に向けた改善点をコメントする。
適用範囲について、「統合ステージ1」では、複数規格の適用範囲を統一することは求めない。もし、適用範囲をそろえることを望まない場合は、このステージでとどまることになる。長期的な視野を持って、この段階からじっくりスタートすることも選択肢のひとつである。
一方、統合を推進したい組織は、「統合ステージ2」から、主要業務・主要組織を含めて、適用範囲の統一化を図ることが望まれる。
これまでJQAの複合審査、IMS審査を受けていた組織は、特別な手続きや準備を必要とせず本プログラムへ参加できるよう準備を進めている。
JQAの複合審査を受けていた組織は、概ね「統合ステージ1」から「統合ステージ2」に該当し、IMS審査を受けていた組織は、概ね「統合ステージ2」から「プレミアム・ステージ」に当てはまる予定である。
また、「プレミアム・ステージ」は本プログラムのフラグシップモデルであり、IMS審査を受けていた組織のなかでも、より高いレベルでの運用を実現している組織を中心に、より多くの組織にチャレンジしていただきたい。
サービス内容や申込方法、またサポートメニューなどの詳細についてはJQAのホームページで紹介していく予定である。