世界各地で利用されるさまざまなセラミックス製品を製造している日本特殊陶業では、本社国内工場だけで約5万点もの計測器を使用し、国内外のグループ会社を含めるとその数は膨大なものとなる。これら計測器の管理の中心を担っているのが計測技術課である。
計測器の管理に関する方針についてお聞きした。
「計測技術課には、弊社の全社的な理念の一つ『良品主義』から導かれた“信頼される結果をお客さまに提供する”という方針があります。その実現のために、独自の計測管理規程を設け、管理しています。また、そこに携わる人材の育成にも力を入れています」(上野氏)。
現場への計測管理システムの展開は、「技能マスター」と呼ばれる“校正の知識と測定技術を有し、同社から認定された社員”が担っているという。
「特に目が届きづらい海外においては、技能マスターを生産拠点ごとに1〜2名ずつ配置し、校正担当者の育成や測定方法の指導を行っています」(上野氏)。
こうした取り組みにより、同社の国内外全ての生産拠点において高いレベルで計測の精度を担保している。
本社国内工場で使用している計測器約5万点の全ては計測技術課の管理下にある。同課の校正は“不確かさ”を採り入れているのが特長だ。
「校正の方法としては、標準器の誤差や測定のバラツキなどといった一般的な不確かさ評価を行って、バジェットシートをつくっています。まだ全ての校正品目に対して評価できていませんが、“要求精度の3分の1の不確かさ”を目標に校正を行っています」(森氏)。
自社内での校正に不確かさを採り入れる企業はまだ少なく、非常に信頼性の高い校正に取り組んでいることがうかがえる。
自社内での校正が困難な約5千点の計測器は、JQA等の外部機関に委託している。
「ISO/IEC 17025に基づく認定校正が必要なものに関しては、JQAもしくは計測器メーカーにお願いしています」(上野氏)。
JQAに対する印象を伺った。
「JQAは対応できる範囲が幅広いので、スムーズに依頼できるのが良いですね。また、校正に関する知見が豊富で、こちらからのいろいろな問い合わせに応えていただけるので助かっています」(森氏)。
「JQAに依頼していれば問題ないだろうと思えるくらい、技術力には大きな信頼を寄せています。かつて弊社の測定値とJQAの測定値に数μmの違いがあり、なぜそうなるのかを相談した際、丁寧に対応していただいたことを覚えています」(石原氏)。
同社とJQAのかかわりは広く、計測器の校正のみならず、環境マネジメントシステムの国際規格ISO 14001の認証や、同社のCSR・サステナビリティ憲章に基づく環境・社会パフォーマンスデータの検証サービスなども利用いただいている。
日本特殊陶業では近年、新製品の開発に力を入れているという。そうしたなかで、今後の校正におけるビジョンをお聞きした。
「新しい製品を世の中に送り出すにあたって、我々の校正が後手に回ってはいけないと考えています。これまでは製品のカタチがある程度できた段階で校正について考えていましたが、これからは早い段階で準備していく。具体的には、新製品の評価に新しい計測器が必要であれば、開発技術者と精度保証について話し合い、先取りしていく考えです。“新しい校正については先進的に、従来からの校正についてはよりリーズナブルに”ということが、私たちのビジョンです。今後は画像測定器など新しい計測器を利用する場面も増えると思います。JQAにはこれからも幅広い分野で協力いただきたく、大いに期待しています」(上野氏)。