富士フイルムビジネスイノベーション株式会社様

環境課題の解決に向けた取り組み

(JQA)
御社は環境面での社会貢献活動に意欲的に取り組まれており、環境方針が社員の方々に浸透している印象を受けます。環境課題の解決に向けた具体的な取り組み事例を教えてください。

サステナビリティ推進室
福田 亮子 氏

サステナビリティ推進室
福田 亮子 氏

(福田氏)
当社の商品を通じた環境課題解決の取り組みについてご紹介します。
1つ目は、省エネルギー性能の向上や省資源など環境に配慮した製品開発です。富士フイルムグループでは環境方針『グリーン・ポリシー』を制定していますが、この方針の下「Green Value Products」認定制度(環境ラベル タイプⅡ)を構築しています。製品開発時に環境配慮設計アセスメント(評価)を行い、製品の環境価値を明確化します。その結果を社内の審査会で審査・認証してランク付けを行い、「Green Value Products」として認定。積極的に環境負荷を低減する製品の提供を進めています。
毎年、年度はじめに社内関連部門に対して環境方針『グリーン・ポリシー』の展開説明会を開催しており、「Green Value Products」の創出も盛り込むことで、開発部門の活動を後押ししています。それらの商品を支える省エネルギー技術の一例に低温定着トナー「Super EA-Ecoトナー」があり、印刷時の消費電力低減によるCO2削減に取り組んだ結果、定着温度を従来のEAトナーと比較して当社試算で30℃以上下げてきました。環境技術開発や取り組みを継続することにより、環境負荷を低減する製品を展開しています。
2つ目は、資源循環に対する取り組みです。当社は業界でいち早く、1995年から全社リサイクル方針を掲げ、商品のライフサイクル全体を視野に入れた循環型生産システム「クローズド・ループ・システム」による廃棄ゼロを目指してきました。部品数減や小型軽量化を継続し、さらに回収したリユース部品による再生型機を新品同等の性能で提供。現在の再生型フルカラーデジタル複合機「ApeosPort-VI C RC」においては、部品リユース率は当社試算で最大80%(新造機を100%とした場合/重量比)を超えています。
3つ目は、環境への影響などをライフサイクルアセスメントの観点で定量的に評価する取り組みです。カーボンフットプリント(CFP)算定の比較結果に基づいて全体からの削減率を出しているため、環境負荷低減に向けた信頼性のあるデータを積み上げた分析が可能です。これらは商品開発の上で重要なプロセスとなります。

※EA(Emulsion Aggregation)トナー:
乳化凝集法により、乳化重合樹脂粒子、顔料粒子、ワックス粒子を湿式中(水中)で凝集・合一し、トナー粒子を形成するケミカルトナー。

(JQA)
環境方針をもとに積み重ねてきた素晴らしい取り組みですね。御社の「商品を通じた環境配慮への取り組み」紹介サイト を拝見して、長年にわたる環境負荷低減の努力と、お客さまのニーズに寄り添った商品開発がイメージできました。その際にCFPによる比較算定をしっかりと活用されていますね。

DXへ向けたソリューションの展開について

(JQA)
近年は、さらにお客さまのニーズに応えるべく、DXへのソリューションを展開されていると伺いました。お客さまからの反響などをお聞かせください。

(福田氏)
当社では、複合機を電子化の入り口としてお客さまに活用し、DXを推進いただくソリューションを展開しています。文書の電子化からはじまり、複合機のパネルから直接クラウド上で行える大量の帳票類の自動取り込みや検索・閲覧など、業務効率化へ向けたサービスを提供しています。また、お客さまのステップに応じて、ペーパーレス化、テレワーク、情報漏洩対策などにあわせた商品をお届けすることで、お客さまから喜びの声をいただいています。
当社の「商品を通じた環境配慮への取り組み」紹介サイト でもご案内しているように、複合機に関連するソリューションに使用の“エコ”と“業務品質向上”を両立する技術を追求し、商品サービスを通じてお客さまの業務環境と社会の双方を良くすることを目指しています。会社の理念、方針の下で積み重ねてきたことがお客さまに評価され、さらなる期待に結び付いていると感じています。

(JQA)
ありがとうございます。環境方針の下、お客さまに寄り添い、努力を積み重ねてきた継続性、PDCAのマネジメントが浸透しているのを感じました。

カーボンフットプリント/エコリーフシステム認証について

(JQA)
御社は、2013年10月にカラープリンタのカーボンフットプリント認証を取得されるなど、日本企業のなかで先んじて環境に関する認証取得に取り組まれてきました。カーボンフットプリントやエコリーフシステム認証を取得した背景や認証書の活用事例などを伺い、これから認証取得に向けて取り組まれる企業の参考にさせていただきたいと思います。

(重水氏)
まず、2013年に米国が採用している電子機器の環境に配慮した調達要件であるEPEAT(Electronic Product Environmental Assessment Tool)の評価のため、個品別のカーボンフットプリントの認証を受けました。その後、個品別方式で認証を取得していましたが、認証する製品が増えてくるにつれ、事務手続きが煩雑になってしまったため、2018年にシステム認証の取得に至りました。

(JQA)
カーボンフットプリント/エコリーフシステム認証の製品を算定するシステムの運用を続けるなかで、当初と変わったことはありますか。また、取り組みの手応えなどを教えてください。

品質保証部
環境商品安全統括グループ
平岡 友梨 氏

品質保証部
環境商品安全統括グループ
平岡 友梨 氏

(平岡氏)
個品別認証方式ですと、単発製品の算定を担当者が行うことで終わってしまうため、CO2削減などの長期的視野に立った目標管理などが組織内に仕組みとして構築できないというデメリットがありました。その後、システム認証を取得し、体系的に社内に落とし込んで運用していくこととなったため、事務局を中心に内部監査、外部監査を実施し、メンバーも徐々にスキルアップすることができました。組織的にも2040年の富士フイルムホールディングスが掲げるネットゼロの目標に向けた業務として、部門横断的な取り組みを推進することができ、活動の全てが富士フイルムグループの目標に結びついていきました。このように連動した推進体制ができたことが、一番大きな成果でした。

(JQA)
カーボンフットプリントやエコリーフシステム認証のためだけではなく、本来の目的である2040年ネットゼロ目標への対策に活用され、その成果が実を結びつつあると感じました。

カーボンフットプリントの活用事例(海外)について

品質保証部
環境商品安全統括グループ
重水 秀樹 氏

品質保証部
環境商品安全統括グループ
重水 秀樹 氏

(JQA)
カーボンフットプリント認証に関する取り組みのきっかけとなったEPEATなど、海外への事業展開で認証書を活用されている事例を教えてください。

(重水氏)
はじめはEPEATの評価のためにカーボンフットプリントの認証を活用していましたが、世界の社会課題に対する要求が一段階上がってきたと感じています。欧州の環境規制や自己認証レベルから国家認証レベルまで、海外からさまざまな要求があります。2020年に中国進出企業の複合機として初めて「中国グリーンデザイン製品」に認定されたとき、私は中国現地法人に赴任しており、日本でエコリーフ認証を取得していたことが役立ちました。
最近では、製品レベルのCO2排出量についてのお問い合せが増えています。海外からも問い合わせがあり、個別企業の活動においてCO2排出量を把握するニーズが広がりを見せるなかで、エコリーフ認証が世界中のお客さまにも活用していただける相互認証制度などがあれば良いなと思っています。ESG投資なども盛んになり、環境活動に関して、社会も成熟期に近づいていると感じます。業務の対応は大変ですが、その分、やりがいがあります。

カーボンフットプリントの活用事例(国内)について

(JQA)
日本ではグリーン購入法が改定され、画像入出力機器ではより環境性能が高い「基準値1」として、ISO 14067(温室効果ガス—製品のカーボンフットプリント—定量化の要件とガイドラインを規定した国際規格)に準拠した定量的環境情報の開示が要件となりました。グリーン購入法に関する御社の取り組みをご紹介ください。

(重水氏)
グリーン購入法は2022年から二段階の要求になっていますので、環境規制の対応としてCFPの算定準備をしています。これまでは、必要に応じて対象製品のCFPの算定をしていましたが、今回の改訂により、対象製品の数が今までと比べ非常に多くなるため、ここ一年で加速度的にCFPの算定製品を増やすことが課題になります。今回のグリーン購入法改定は製品のCFPの算定・把握をまずは進めたいという狙いがあると理解していますが、真の目的はその先で、ライフサイクルの視点でCO2排出量を見える化し、どのように削減対策をとるかというステージになると思います。

今後の展望について

(JQA)
御社は、カーボンフットプリント/エコリーフシステムを通じて、製品の環境への影響評価を行い、第三者に認証された信頼性の高い環境情報を開示されてきました。最後に、この分野で注目していることや注力したいことなど、今後の展望をお聞かせください。

(重水氏)
先にも述べましたが、お客さまのCO2削減活動に必須となる情報、国内外の環境規制などでCFPの算定対象製品が増えていくため、我々メーカーとしてはCFP算定体制の強化が課題と捉えています。またその算定結果をグローバルに活用するためのCFP相互認証制度が間違いなく課題になると考えています。CFPの原則である製品比較に使えないとなれば、これからはグローバルで通用しなくなっていくのではないかと思っています。

(平岡氏)
CFP算定では、デジタルデータベースが必要となりますので、国がグローバルに通用する原単位を整備すると、CFP算定の障壁が低くなると考えています。この点については、どの業界も望んでいると思います。
また、社会的にCO2の算定と情報開示が必要になってくると、ライフサイクルでの調達段階や製造段階でDXの技術を使っていかに効率的にデータを収集し算定するか、これらの算定体制の整備が算定結果の信頼性につながるため、今後のCFP算定で強化していくポイントになると考えます。

(JQA)
日本では、ISO 14067を参照した経済産業省のCFPガイドラインが2023年3月に発行され、算定の目的によっては内部検証なども有効とされています。製品比較のために客観性、信頼性を要する第三者検証の検討や参入障壁を低くするデータベースの整備、さらにグローバルな相互認証などの動きが必要となりそうです。

本日は、大変貴重な学びの場をいただき、ありがとうございました。
ライフサイクル視点で省エネ化やCO2削減を目指し、リユースや資源循環など資源の最適利用やカーボンフットプリント/エコリーフシステム認証の体制を整備することが、2040年のカーボンニュートラルの実現など、CO2削減の目標にリンクした活動への布石となり得ることに改めて気付きました。
今回ご提言いただいた課題などを含め、今後の当機構の事業に活かせるように尽力したいと思います。

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