三菱重工サーマルシステムズ株式会社の枇杷島製作所では、同社の主力製品であるヒートポンプ機や業務用空調機、輸送冷凍機などを設計・製造しており、そこで使用される計測器は約10,000点にのぼる。
同社の計測器校正に関する規定や方針についてお聞きした。
同製作所には現在4名の検査員(校正検査員)がおり、計測器の管理および社内校正を行っている。
検査員の教育・育成については、独自の認定検査員制度を設けており、一定の技能と経験をクリアしたスタッフが検査員として認められる。
「検査員になったあとも常にスキルアップを図っており、年度ごとにスキルマップと教育計画を作成し、それに基づいておのおのが腕を磨き、年度末に目標到達度を評価しています」(水谷氏)。
近年は校正に関する社外講習やセミナーにも積極的に参加。JQAが主催している『計測セミナー』についても、長さや圧力等さまざまな計測器を取り扱う方法や、不確かさ評価に関するセミナーなどをご活用いただいている。
「製造部から異動してきたため、検査や校正に関する知識がほとんどなく、勉強の毎日です。JQAのセミナーなどに参加することで、今まで分からなかったことが徐々に明確になってきており、大変助かっています」(逵氏)。
同製作所では使用する約10,000点の計測器のうち、約70%を社内で校正し、残りはJQAを含む外部機関で校正している。
「ISO/IEC 17025認定試験所による認定校正が必要な計測器と、社内で校正できない計測器の一部をJQAに依頼しています。弊社の製品は国内のみならず、EUやアジアなど世界各国で販売していることから、海外の認証機関やお客さまからの監査を受ける機会も多く、認定校正を要望されるケースが増えています。こうした要求に基づいて認定校正が必要な計測器を洗い出し、JQAに校正をお願いしています」(玉置氏)。
現在、認定校正が必要な計測器は200〜300点あり、トータルで700〜1,000点の計測器をJQAで校正している。
「いろいろな国の機関の監査を受けるのですが、JQAの校正証明書を見せると、おおむねご満足いただけるため、JQAは世界各国の監査機関に名前が通っているのだな、信頼が厚いのだなと感心しています」(玉置氏)。
なお、同製作所からの校正依頼は商社経由で行われており、計測器も商社よりJQAに送付されているが、専門性の高い内容の確認等については、商社の同意を得た上で、同製作所とJQAの間で直接行っている。
「商流はあくまで弊社から商社、商社からJQAが基本ですが、弊社は厳格な計測器管理を行っていることから技術的な要求も多いため、直接相談することで、齟齬もなく、スピード感も生まれています」(水谷氏)。
最後にJQAに対するご要望やご評価をお聞きした。
「前述したように、JQAは海外の監査機関の信用が厚く、その様子を見て、私自身もさらにJQAに対する信頼度を高めています。要望を言えば、校正の納期をできるだけ短くしてほしい。当製作所は量産工場のため、毎日計測器を使用するので、一日でも早く戻していただけると助かります。また、計測器の大半を社内で校正しているので、校正方法の決め方であるとか、検査員(校正検査員)の教育方法であるとか、そういった面でもアドバイスをいただけるとうれしいです」(玉置氏)。