株式会社シャトレーゼ様

ISO 9001を企業体質強化のツールとして活用 品質マネジメントシステムの運用・定着・進化を図る

株式会社シャトレーゼは、洋菓子・和菓子・アイスクリーム・パン・飲料等を製造し、フランチャイズチェーンを含む全国457の店舗で販売している。同社は、CQM(シャトレーゼ品質マネジメントシステム)の運用・定着・進化を目的に、2014年9月、本社および主力工場である中道工場、豊富工場、白州工場でISO 9001の認証を取得した。常務取締役 商品事業本部長 古屋 勇治氏、品質保証部 最高顧問 広瀬 敏彦氏、品質保証部 部長 長倉 建作氏に、ISO 9001認証取得の目的や工夫した点、成果、今後の展開についてうかがった。

事業環境が変化する中、企業体質の強化を目指す

常務取締役 商品事業本部長 古屋 勇治氏
品質保証部 最高顧問 広瀬 敏彦氏
品質保証部 部長 長倉 建作氏

お客さまの安全・安心への関心の高まりや、原材料費の高騰といった事業環境の変化を受け、シャトレーゼは2012年7月、ISO 9001に基づいた品質マネジメントシステムCQMの構築に着手した。

「事業環境が変化する中、お客さま満足度を高めるには、企業体質を強化しなくてはならないという危機感がありました。お菓子を通して、お客さまに笑顔をお届けすることが私たちの使命であることを、全社員が再認識する必要があったのです。そこで、品質保証体制を再確立しようというトップの方針のもと、品質マネジメントシステムの構築と全社員への浸透を目的に、CQM推進委員会を立ち上げました」(常務取締役 商品事業本部長 古屋 勇治氏)。

CQMの運用は2013年4月にスタートした。しかし、11月になってもプロセスの運用状況は40%に達していないことが判明した。

「このままCQMを続けても現場の負担が増えるばかりなので、止めてしまうという選択肢もありました。しかし、社長は体質強化を図るために絶対にやるという強い意志を持っていました」(品質保証部 部長 長倉 建作氏)。

「CQMを社内に浸透させるには、外部からの力も必要であるという判断のもと、ISO 9001の認証取得という目標を新たに設定したのです」(品質保証部 最高顧問 広瀬 敏彦氏)。

CQMの浸透に向けて、ISO 9001認証取得プロジェクトがスタート

ISO 9001認証取得というトップの方針が打ち出され、2013年11月、新たな体制のもと、ISO 9001認証取得プロジェクトをキックオフした。

「プロジェクトの責任者として、ISOの取り組みで最も意識したのは全社一丸となることでした。企業体質の向上を目指して、製造だけでなく、総務、経理、営業、販売を含めて取り組みました。プロジェクトのメンバーは、全社員を巻き込み推進していける人物という観点で22名を選定しました」(古屋氏)。

「ISO 9001の要求事項を全社員が知る必要はありません。プロジェクトメンバーが理解し、それを実効性のあるかたちで、各組織の作業手順に落とし込んでいきました」(広瀬氏)。

「例えば、製造に関しては、まずプロジェクトメンバーである工場長に落とし込み、さらに工場長からグループ長、グループ長からライン長、ライン長から一般社員に落とし込んでいくというかたちで、全社員への浸透を図ってきました」(長倉氏)。

スケジュールや内部監査にも独自の工夫を盛り込む

同社は2014年9月の認証取得を目標に、3月にファーストステージ審査、8月にセカンドステージ審査というスケジュールを組んだ。通常、ファーストステージとセカンドステージの間は1ヵ月程度だが、ここにも独自の工夫が見られる。

「認証取得が目的ではない、定着して運用することが重要であるということを意識しました」(古屋氏)。

「ファーストステージ審査を早く受け、多くの指摘を受けることで、全員に危機意識を持ってもらうことが狙いでした」(長倉氏)。

<認証取得までのスケジュール>
2012年 7月 CQM(シャトレーゼ品質マネジメントシステム)推進委員会のキックオフ
2013年 3月 マニュアル発行
4月 CQM運用開始
11月 ISO 9001認証取得プロジェクトのキックオフ
2014年 2月 内部監査、マニュアル改訂
3月 登録審査(ファーストステージ)
8月 登録審査(セカンドステージ)
9月 ISO 9001認証取得

審査においてJQAが高く評価した取り組みの一つに、内部監査の実効性の高さがあげられる。

「内部監査員には、自分の部門のことは棚に上げて指摘を行うように指示しました。自分自身の部署も内部監査を受けることを考えると、お互いに厳しい指摘はしにくいかもしれませんが、会社を良くすることが目的であるという共通認識を持つことが重要だと考えました」(古屋氏)。

「内部監査員表彰制度も設けました。有効な指摘を行い、ヒントを与え、改善に貢献した内部監査員を社長表彰する制度です」(広瀬氏)。

<内部監査員表彰の評価項目>
分類 内容
指摘件数 問題点の見える化
監査報告書 解決策の指南
知識 CQM品質マニュアルの理解度
フォロー監査 指摘事項の有効性評価の妥当性

CQMによる成果と今後の展開について

CQMの浸透が図られたことにより、クレーム件数はCQM開始前と比較して30%減少した。また、是正措置のレベルアップが図られたほか、社内教育体制の整備にもつながっている。

「以前の是正措置は『注意します』というレベルでしたが、現在では、仕組みやルールの変更に及ぶようになってきています。また、CQMを浸透させるためには現場の理解が不可欠であり、教育がとても重要です。そのための社内教育体制がしっかり整備されたのは大きな成果だと思います」(長倉氏)。

「マニュアルや手順書は、社内サイトで全員が見ることができるようにしています。マニュアルは、これまでに3回改訂しています。問題を発見し、是正処置を行い、マニュアルを改訂し続けることで、継続的に会社を良くしていくことが可能になります」(広瀬氏)。

「ISO 9001の認証取得は、ゴールではなくスタートです。年2回のISO 9001審査を有効に活用しながら、CQMの運用・定着・進化を図り、企業体質を強化していきます」(古屋氏)。

年度別クレーム件数の推移 年度別クレーム件数の推移
品質マニュアル 品質マニュアル

取材日:2014年12月11日