情報誌 ISO NETWORK Vol.19
日本では、一昨年あたりから、ISO認証取得の企業や組織による不祥事が相次いだ。世界に目を向けても、経済的・社会的な事情の差はあるものの、さまざまな不祥事が企業や組織の活動に悪影響を及ぼし、社会不安を招いた例は少なくない。
こうした事態を受け、経済産業省は、『マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン』(以下、ガイドライン)の公表に踏み切った。2008年7月のことである。一方、マネジメントシステム関連の組織や団体は、「マネジメントシステム信頼性ガイドライン対応委員会」(以下、MS信頼性ガイドライン対応委員会)を設置し、ガイドラインの内容を検討。ほぼ1年という時間をかけ、マネジメントシステムの信頼を回復するための取り組みを、大きく6つの項目から成る「アクションプラン(行動計画)」としてまとめ、今年8月に公表した。
では、ISO等のマネジメントシステムの認証を受ける立場の企業や組織は、この一連の動きをどうとらえたらよいのか。ガイドラインやアクションプランの公表によって、従来の取り組みを変える必要があるのだろうか。今回は、MS信頼性ガイドライン対応委員会の委員である、統計数理研究所の椿 広計氏と、JQAの小林 憲明に話を聞いた。
わが国のマネジメントシステム規格認証制度の現状と課題
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今年8月10日、日本経済新聞の1面に、「ISO再認証、1年凍結」というショッキングな見出しが出ました。この記事と、現在のISO認証制度について、どんな印象をお持ちですか。
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不祥事というのは、日本特有の問題でしょうか。海外での認証の状況も気になりますが。
経済産業省が公表した『マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン』の概要
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昨年、経済産業省が『マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン』を公表しました。
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ガイドラインで指摘された点を、認定機関、認証機関はどう受け止めましたか。MS信頼性ガイドライン対応委員会では、どんな議論が交わされたのですか。
MS信頼性ガイドライン対応委員会により策定されたアクションプランの概要
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話題をアクションプランに転換し、6つの項目について順にうかがいます。まず、「認証に係る規律の確保」についてお聞きします。故意の虚偽説明によって認証を取り消された組織について、一定期間再認証しないとのことですが。
- 認証に係る規律の確保
- 1-1. 故意の虚偽説明への対応
- 1-2. 重大な法令違反への対応
- 1-3. 認証範囲適正化への対応
- 審査員の質向上と均質化
- 審査要員の採用、育成、評価、配置の力量確保のモデルを作成。
- 認定・認証に係る情報公開
- 1)認定審査結果の情報公開
- 2)認証機関の基本的情報の公開
- 有効性審査の徹底
- 有効性審査について、関係者が共通の理解を持つ、認証審査及び認定審査のあり方をまとめた。
- 認証制度の積極的広報
- 国際整合性とアクションプラン徹底策検討
- 故意の虚偽説明への対応及び認証範囲適正化への対応のアクションプラン実施を徹底するために追加的な方策として認定に対する参考文書としてNote(仮称)を発行する。
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重大な法令違反への対応や、認証範囲(スコープ)の適正化への対応も盛り込まれています。
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審査員の質向上と均質化については、いかがでしょう。
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次に、認定・認証にかかわる情報公開の充実についてお聞かせください。
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有効性審査の徹底について、お話しいただけますか。
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ISO認証制度について積極的に広報するとのことですが、どんな意図があるのでしょう。
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アクションプランの最後の項目、国際整合性と徹底策の検討についてお願いします。
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今回、引き続き検討とされた事項はどうなるのですか。
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最後に、制度を利用している組織や企業、消費者の皆さんに対し、一言お願いします。
アクションプランの6項目
アクションプラン(対応委員会報告書)全文は、日本マネジメントシステム認証機関協議会(JACB)のホームページからダウンロードできます(http://www.jacb.jp/)