情報誌 ISO NETWORK Vol.19

[特集]ISO9001:2008への移行期間いよいよあと1年に

ISO 9001の2008年版への移行期間が残すところあと1年を切りました。今後移行を予定している組織の皆さまは確実な準備をお願いします。また、先ごろ実施した「ISO 9001:2008移行についてのアンケート調査」の結果から、移行までの実務の実際をご紹介します。

ISO NETWORK編集部はJQAメンバーズサイトで10月26日から、移行を済ませた組織とこれから移行される組織、各300組織に対して緊急アンケートを実施しました。アンケートの結果から、これから移行される組織の多くは、審査時期にかかわらずすでに「規格の改訂点の確認・理解」「システムの見直し」を中心に準備に取り掛かる一方、「内部監査員、社員の教育」はこれからのようです。

未移行組織アンケート「現在、移行の準備はどのような段階ですか。」

注力のポイントは「規格改訂点の確認」「内部監査員、従業員の教育」

Q1の回答は、「内部監査員、従業員の教育」が2番目に多く、これから移行する組織も「規格の改訂点の確認・理解」が進んだあと、教育に時間を要することが予想されるので早く取り組む必要があるかもしれません。

移行済み組織アンケート「Q1. 2008年版への移行で、特に注力したこと、苦労したことは何ですか。」

情報源は、JQAの規格改訂説明会資料が中心

さらに、移行を済ませた組織の調査では、移行のための情報源は「JQA規格改訂説明会資料」との答えが最も多く、次いで「書籍・インターネット」との回答が寄せられました。

移行済み組織アンケート「Q2.移行のための主な情報源は何でしたか。」

移行準備期間は組織によってまちまち。最短は3ヵ月 [図4]

移行の各準備プロセスに要した期間をうかがいました。[図5]は、回答いただいた組織のうち12社をピックアップして、準備開始から移行審査までに要した期間を図式化したものです。回答数126件のなかで最短は3ヵ月でした。いずれも情報収集の開始から規格改訂点の確認に比較的時間をかけており、教育から内部監査までは短い期間で行っていることがわかります。

[図4]移行準備開始から移行審査までに要した期間 [図5]移行準備開始から移行審査までのプロセス例

移行済み組織の声 − 全般にスムーズな移行が実現

移行を済ませた組織からの感想では、「スムーズに移行できた」「予想していたほどの負荷ではなかった」という声が大半を占めました。

アンケートの結果にも見られるように、「規格の改訂点の確認、理解をするのに時間を要した」「マネジメント層や内部監査員、従業員への周知徹底が大変であった」など、移行までのプロセスでは、改訂点の理解と教育が大きなヤマであることがわかりました。

一方、今回の移行を通じて、「ISO 9001の理解を深める結果となった」「取り組みの見直しを行うよい機会となった」「受審で指摘された改善の機会を、予防措置として現場に周知している」など、QMSをビジネスに役立てる機会ととらえる意見も数多く寄せられました。

以下に、移行済み組織からの感想の一部をご紹介します。

移行済み組織アンケート

Q4. 2008年版への移行を振り返ってご感想をお聞かせください。

スムーズに移行ができた

  • 事前に規格改訂情報を入手していたことで、計画的かつ戦略的な移行ができた。[情報技術、神奈川]
  • 改正が大きな変更でなかったことと、規格改正に伴う見直し時に組織内が協力的であったことにより円滑な導入ができた。[情報技術、神奈川]
  • 認証当初から要求に沿っており、特に変更や改訂等は行わずにスムーズにいったと思う。ただしあらゆる面で有効性の評価をするのは難しく思えた。[ゴム・プラスチック、新潟]
  • 予想していたほどの負荷ではなく、大きな問題ではなかった。[サービス、兵庫]
  • 基本的に、内部監査、マネジメントレビューで実施している内容が大きく変わったとは理解していない。従って、実際の移行について大きな違和感はなく実施できた。[建設、東京]
  • 大きな改訂ではなかったので負担も少なくスムーズに移行できた。[繊維、福岡]
  • 要求事項の追加がなかったので、移行が容易だった。[電機装置、神奈川]
  • 「アウトソーシングの管理の方法」以外については、特に大きく変更する点はなく割とスムーズに移行することが出来たように思います。[輸送・倉庫、大阪]
  • 2008年版は、規格の大幅改訂ではなく、2000年版への追補だということを昨年開催された「JQA規格改訂説明会」で聞いていたので、慌てずに準備対応し社内の関係者にも研修会等で、追補部分を重点に説明することによりスムーズに移行ができました。[電機装置、新潟]
  • 今回は移行自体によるシステムの変更は必要なく、それに便乗してのシステム内の見直しが中心になった。思ったより軽く済ませることができたので、認証をいただいた今ホッとしている。[電機装置、愛知]

システムやプロセスの見直しができた

  • 大まかには2000年度版と変わらないが、あいまいな部分が明確となり、一部是正が必要となった。要求事項がより明確になったことで、今後改善すべき点が見えるようになった。[機械・装置、奈良]
  • 3年前の登録審査を思い出しマニュアルを再度見直す機会を得ました。移行と更新審査が同時期にあったためマニュアルも大幅に変更し、初めてマニュアルを読む者が理解しやすいように注釈を入れた。新しいマニュアルは他社には無く見やすく、理解し易いものであると自負している。[食料品、大阪]

大変だったこと

  • 2008年版への変更内容の理解が難しかった。翻訳を変えたという内容をどこまで(システムに)反映するか、判断に迷った。[医薬品、東京] ( )内は編集部にて加筆
  • 規格の改訂点をどのように実行すればよいかの理解に時間がかかった。[基礎金属、茨城]

審査予定月が9、10、11月の組織の方々へ

是正・審査判定会の日数を含めた移行スケジュールをご検討ください

これから移行される組織は2010年11月14日までに2008年版に移行を完了していただくことになりますが、移行の完了には審査後、審査判定会の承認を得なければならないことをご存知でしたか?

通常、審査終了後には是正処置計画書(該当のある場合)をご提出いただき、それをもって審査判定会に進みます。

そのため、審査判定会の承認には審査後2〜4週間程度日数を要する可能性があります。例えば、移行審査を2010年10月中旬~11月上旬に受審した場合、審査判定会の通過が11月14日を超過してしまう恐れがあり、現在の2000年版の認証は失効となってしまいます。このため、審査予定月が9、10、11月の組織は、審査を1ヵ月程度前倒しして受審いただく場合があります。

審査から移行終了まで

[移行審査で指摘がある場合]移行審査→是正計画作成(※)→審査員へ提出→審査員の承認→判定会へ推薦→審査判定会(※)→承認→登録証発行(是正計画作成から登録証発行まで1カ月程度の時間が必要)。[移行審査で指摘がない場合]移行審査→審査判定会(※)→承認→登録証発行

※是正計画、審査判定会で差し戻しとなる場合があります。

これからの1年で移行の予定のあるお客さまは準備状況にかかわらず下記JQAのサービス支援担当までご一報ください。

企画・推進センター TEL : 03-4560-5710(代表)
ISO関西支部 TEL : 06-6393-9063(代表)
ISO中部支部 TEL : 052-533-9221(代表)

JQAは移行に関する情報やQ&AをJQAホームページに掲載していますのでぜひご活用ください。

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