情報誌 ISO NETWORK Vol.19

[登録企業・組織訪問] 第3回 FXプライム株式会社 ISO 10002を活用し、全社でステークホルダーの満足度向上に取り組む

三浦 俊一社長

FXプライム株式会社は、2009年9月、JQAの第三者審査を経て、FX〔外国為替保証金(証拠金)取引〕を取り扱う専業会社では初めて苦情対応マネジメントシステムISO 10002への適合宣言を出した。同社の三浦 俊一代表取締役社長に、ISO 10002を導入したねらいや効果についてうかがった。

FXは為替の値動きによる売買の差額で利益を追求する仕組みを持つ新しい金融商品だ。FXプライムは、伊藤忠グループの外国為替取引会社として、個人顧客向けにFX取引のサービスを提供している。電話などによる勧誘を行わずインターネットによる取引のみをサービスとして提供しているところに特徴がある。

「FXは常に市場が開いて値動きが激しいため、他の投資商品よりも売買機会が多い反面、それだけ高いリスクもあります。リスクの高い金融商品をアマチュアである個人のお客さまに提供しているわけですから、決していい加減なことはできません。会社設立から経営管理体制の整備、コンプライアンス、ITシステムの構築運用体制の整備を徹底し、お客さまの信用を土台に継続的に事業の成長を図ってきました」(三浦社長)

今回ISO 10002を導入したのも、会社の信用を高め、体質を強化するプロセスの延長線上にある。ISO 10002では第三者審査を受けず自己適合宣言をする選択肢もあったが、FXプライムはJQAの審査を受ける道を選んだ。

「ハードルは常に高いほうを選ぶ。ISO 10002でも第三者の冷静な視点で厳しく見てもらう。これがポイントでした」

インターネットを介した取引を行うFXプライムでは、お客さまをはじめとするステークホルダーへの対応が、経営、情報システム、情報セキュリティのマネジメントとも密接なつながりを持つ重要なマネジメント対象であると考えている。例えばシステム障害や個人情報漏洩などの一次障害だけでなく、そのあとの対応次第で二次災害、三次災害へ波及してしまうケースも考えられるからだ。このため、ISO 10002を活用してお客さまだけでなく株主・取引先・管轄官庁ほか社員以外の全てのステークホルダーへの対応を図るシステムを構築した。

同社では、2年半前に9,000ぐらいだった口座数が現在は8万口座にまで拡大している。ISO 10002が、お客さまの急拡大に対する自己点検システムの一つとしても機能している。

三浦社長は導入の効果として、お客さまの基本スタンスが何かをわきまえる部分が強化されたことを挙げている。お客さまが何を望まれているのか、何がネックになってこういう声が出ているのか、原因を把握することに目が向いてきたという。

それに加えて、カスタマーソリューション部では集約したお客さまの声を分析し、サービス・商品に対する改善提案、要求を吸い上げることができるようになってきた。

「FXの法規制が強化され、いったん業界は縮小するでしょう。しかし、業界の透明度、健全性が増していけば、その先にFXビジネスが伸びる余地は十分にあると見ています。そのときにこれまで培った信用力がものをいう。また、規制に沿った商品構成の転換を進めるのに、お客さまの声の分析が非常に役に立つ。それが当社の売上の拡大にもつながります。」

三浦社長は、ISO 10002の導入が、「こう聞かれたらこう対応する」というマニュアル的な局面だけではなく、将来の利益につながる展開にも役立っていく手応えを感じている。