情報誌 ISO NETWORK Vol.20

[JQA審査アンケートの結果から]お客さまによりご満足いただける審査サービスのためにアンケートのご意見を生かしています−品質推進室 室長 佐藤根隆之

JQAでは、審査サービスを提供するにあたって、お客さまにアンケートを実施しています。回収したアンケートはデータベース化され、審査技術とサービス全般の向上に役立てられています。お客さま満足向上を図るうえで、アンケートで寄せられたお客さまのご意見を分析し審査に反映していく仕組みを紹介します。

お客さまのご不満に対する是正と効果の確認

JQAは審査アンケートの集計結果を毎年1回公開していますが、5段階評価による定量評価の部分はここ数年大きな変動がなく、平均点にすると5段階評価で4点台という高い評価を継続していただいています。JQAは2007年に「審査の基本姿勢」5項目を公表し実践してきましたが、この基本姿勢の考え方が審査員に広く浸透してきたことが安定した高評価に寄与していると考えられます。

審査アンケートデータ集計

2009年1年間のデータ集計の結果、7項目の質問すべてについて、約90%のお客さまから「満足」「どちらかと言えば満足」という回答をいただき、おおむねご満足いただいている結果となりました。

  • Q1 今回の審査は、総合的にご満足いただけたでしょうか? 満足59.8%、どちらかといえば満足31.0%、普通7.9%、どちらかといえば不満0.8%、不満0.2%、無回答0.3%
  • Q2 指摘内容、コメントは貴社のマネジメントシステムの向上にとって有益でしたか? 満足59.4%、どちらかといえば満足32.3%、普通7.3%、どちらかといえば不満0.7%、不満0.1%、無回答0.2%
  • Q3 審査は貴社の業態に沿った適切な内容でしたか? 満足58.0%、どちらかといえば満足29.4%、普通11.3%、どちらかといえば不満0.9%、不満0.1%、無回答0.2%
  • Q4 審査員によって規格の解釈に相違がありましたか? 無かった50.2%、ほとんど無かった35.1%、どちらともいえない9.5%、多少あった3.9%、あった0.5%、無回答0.8%
  • Q5 審査前の審査員との連絡、分かりやすい説明、説明を聞く態度などコミュニケーション全般としていかがでしたか? 満足68.4%、どちらかといえば満足22.7%、普通7.6%、どちらかといえば不満0.9%、不満0.2%、無回答0.2%
  • Q6 審査員の審査態度はいかがでしたか? 満足74.9%、どちらかといえば満足17.2%、普通7.0%、どちらかといえば不満0.7%、不満0.1%、無回答0.1%
  • Q7 時間は守られましたか? 満足70.3%、どちらかといえば満足25.0%、普通2.0%、どちらかといえば不満2.3%、不満0.3%、無回答0.2%
  • 集計期間:2009年1月から12月 回収件数:14,523件(審査実施件数の約90%)(品質推進室調べ)

一方、審査アンケートには5段階の定量評価項目に加え、フリーアンサーでのご回答もいただいています。ここには貴重なご意見が書かれていることが多いので、15項目ほどに分類してデータベースに入力しています。

フリーアンサーへのご意見の主なものは、大きく、(1)次回審査員に申し送りする事項(審査内容のご要望、審査計画)、(2)JQA内で検討・周知するもの(規格解釈相違、指摘内容や改善の機会のご不満、業態に合わせた審査など)、(3)好評価なご意見に分けられます。

このうち(2)に相当するものが、お客さまのご不満と思われるご意見です。2009年はフリーアンサーに記入があったものの中でご不満と思われるご意見が、19%ほどありました。フリーアンサーへのご記入が全体の20%ですから、全体の4%以下ながらもご不満なご意見をいただいていることになります。また、5段階評価の中にも1点や2点といった「明らかにご不満がある」という回答も、少数ながら存在します。

これら、お客さまのご不満と思われるご意見は、重要案件として、速やかな対応を心がけています。まず担当した審査員より情報収集をし、それからお客さまに連絡をとります。ファーストコンタクトは、アンケートを品質推進室で受け付け後、おおむね1週間程度を目標としています。内容に応じて品質推進室と推進センター顧客担当、そして審査技術にかかわる案件の場合は審査員の管理者などが対応をして、お客さまからさらに詳しく事情を伺うことから始めていきます。

JQA内部におけるフィードバックは、品質推進室と関連する部署の連携で行われます。例えば、審査員間で規格解釈に相違があった場合は、審査技術センターに伝達、審査員会議などの機会を通じて全審査員に展開して是正を図っています。

ご不満をいただくものには、審査員とお客さまとのコミュニケーション不足に起因するものが多く見られます。現場での対面審査では会話の中の行き違いや発言の真意の誤解から、ご不満にいたるケースです。JQAとしては、「お客さまがご不満に思った」という事実は基本的に審査サービスとしてJQAの説明不足と判断しています。コミュニケーションを重視した対話型審査を基本姿勢の一つとしていますので、これは当然のことです。

こうしたケースでは、それぞれの審査員に事情を伝え、必要に応じて再教育などを実施して再発防止を図っています。あわせて問題発生の内容に応じてJQAの組織としての改善策も検討・実施します。その後、一定期間を通じて同じような事象が発生していないかどうかを確認し、効果の確認を行います。これらの措置は各部署に伝達して水平展開を求め、同じようなことが他部署で起きることを防ぐように努めています。

アンケート分析フローアンケート分析フロー

審査アンケートを全面改訂し、同時にWeb化

これまでお客さまの細かいニーズを分析するためには主にフリーアンサーを参考にしてきましたが、より幅広いお客さまのご意見を吸い上げるという点では改善の余地があると考えています。また、紙の回答用紙に手書きで記入してもらい、郵送していただくという仕組みは、必ずしも今日的な方法ではありません。

そこでJQAでは、この審査アンケートの全面改訂を予定しています。まだ最終的に確定はしていませんが、フリーアンサーに多く頂戴しているご意見を参考に、チェック項目を設けて「はい」「いいえ」で答えていただく設問を増やす予定です。設問数は増えますが、今まで包括的に伺っていた設問を、より細かく具体的にお尋ねする方向に変えていきます。

従来通り、審査サービスについての質問が中心ではありますが、審査の前段階や審査にかかわる窓口サービスなどについても評価していただけるようにしたいと思っています。

また、紙ベース手書き郵送方式のアンケートを、お客さま専用サイトを経由したインターネット回答方式に変更してお客さまの利便と集計の迅速化を図る予定です。

新しいアンケートシステムへの移行時期はまだ決定していませんが、準備が整い次第別途ご連絡を差し上げる予定です。この新アンケートシステムによって、より幅広く具体的なお客さまのご意見を、JQAの審査サービスにフィードバックしていきたいと思いますので、引き続き皆さまのご協力をお願いいたします。