ISO 14001の認証件数は世界的に高水準で増加を続けていますが、環境マネジメントシステムを有していない中小規模の組織は数多く存在します。その要因は、ISO 14001の構築が、作業規模が大きく、費用のかかるプロセスであるといった認識を持たれていることであり、環境マネジメントに対する組織的なアプローチが妨げられる場合があるからです。
ISO 14005はすべての組織、とりわけ中小規模の組織がISO 14001の要求事項を満たす環境マネジメントシステムを段階的な方法で導入する助けとなるよう設計されたガイドライン(指針)です。DISによれば、各要求事項を時系列に沿ってそれぞれ3~5段階のステップに分け、組織の目的や使用できる資源に合わせて構築できるようになっています。
2010年2月8~10日:SC 1/WG 3会議
2010年9~10月:IS発行予定
昨今のエネルギー事情、地球温暖化の深刻化に伴い、省エネルギー・温室効果ガス削減等エネルギーマネジメントに対する関心が高まっています。2008年2月、ISO技術管理評議会は、アメリカ・ブラジルの提案を可決しました。その結果、プロジェクト委員会(PC 242)でISO 50001を策定することが決定しました。日本は2008年9月、プロジェクト委員会の第1回会合から参加してきました(参加国は25ヵ国)。
ISO 50001はエネルギーを使用するあらゆる組織が対象となり、規模の大小は問いません。著しいエネルギー使用を特定して、そのエネルギーパフォーマンス、エネルギー効率や省エネルギーの継続的向上を図ることが目的とされています。
以下の3点が規格のポイントになります。
ベースラインを出して、レビューで著しいエネルギーの使用を特定した後、インディケーターで評価する活動が機軸となります。
2010年11月:FDIS発行予定
2011年前半:IS発行予定
※IS発行後速やかにJIS化される見込み
ISO 14005 (環境マネジメントシステムの段階的適用のための指針) |
規格名 | ISO 50001 (エネルギーマネジメントシステム - 要求事項及び利用の手引き) |
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ISO/TC 207/SC 1
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委員会 | ISO/PC 242
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DIS(国際規格原案) | 2010年3月現在の開発段階 | DIS(国際規格原案) |
2010年9月〜10月 | 発行時期 | 2011年 |
ISO 14001の要求事項を満たす環境マネジメントシステムを、主に中小規模の組織が段階的に導入するための指針。最終的にISO 14001に基づく環境マネジメントシステムを構築したことと同じレベルに到達できる仕組み。(財団法人日本規格協会 規格概要説明会案内より) | 規格概要 | 組織の自主的な省エネ、省エネルギーコスト、CO2削減等を推進する仕組みを規定。 |
ISO 14005の必要性について策定に関わっている伊藤先生は次のように語っています。
「現在、中国企業はISO 14001の取得に熱意を示しており、国別取得数で2008年からトップです。ISO 14001支援を目的に世界中にEMSプログラムが存在しますが、これらは国際的なプログラムではないので、ISO 14005が世界中に広く普及すると、既存のEMSプログラム参加企業が国際市場で不利となる可能性があります。
日本企業がグリーン調達で有利となるために、国内のEMSプログラムの事務局はISO 14005との整合性を示す必要があるでしょう。また、中小企業の方々もISO 14005をISO 14001取得に向けた強力なツールとしてご活用いただけると思います。
環境経営は今後組織が生き延びていくためには避けて通れない道です。今後も作り手の立場から、中小企業の皆さまの活動を支援・推進できればと思っています」。
ISO/TC 207/SC1日本代表の寺田博委員、伊藤佳世委員によるISO 14005規格概要説明会が予定されています。現在のところ東京など他の地域での開催日は未定です(3月9日現在)。(名古屋では3月10日に開催されました)。この件については、財団法人日本規格協会のウェブサイト(http://www.jsa.or.jp)に公開される予定です。