情報誌 ISO NETWORK Vol.21

IQNetはグローバルな経済活動を行う組織のために革新的な認証サービスの開発に努めています。 インタビュー IQNet 事務局長 トニー・ディ・パルマ氏

経済活動の国際化によって、グローバルな規格認証に対するニーズが一段と高まっている。

IQNetは認証機関の国際的なネットワークで、そのネットワークを構成する37のパートナー認証機関の事務所は、世界150ヵ国以上の国々に存在する。JQAはこのIQNetのパートナーであり、IQNetを通じてグローバル認証サービスを提供している。

先ごろ来日したIQNetの事務局長トニー・ディ・パルマ氏に、世界の規格認証に関する最近の動向とIQNetの新しいサービスについて聞いた。

Q&A

まず最初に、現在のIQNetについてお話しください。

IQNetは、世界各国を代表する認証機関が加盟している、国際的な認証機関ネットワークです。現在、IQNetは2つの異なる機能・性格を有しています。

一つは、IQNet設立当初からの目的である認証機関の国際的なネットワークとしての機能です。現在、IQNetアソシエーション(IQNet Association)のもと、37の認証機関が加盟し、相互協力や相互承認、プロセスの共通化、情報共有などの役割を担っています。

もうひとつは、2005年にIQNetアソシエーションから認証部門として設立されたIQNet リミテッド(IQ Net LTD.)の機能です。IQNetリミテッドは、IQNet アソシエーションの完全子会社であり独自の製品、サービスを開発し、IQNet アソシエーションのネットワークを通じて、世界の組織に認証サービスを提供しています。

IQNet リミテッド設立から5年を経て、世界の認証分野においてIQNetの存在感はどのように変わってきていますか?

この5年間、世界各国のパートナーを始め、さまざまなステークホルダーとの協力によって、おかげさまでIQNetの存在感は着実に高まっていて、IQNetパートナー全体の認証数は、2005年には約25万件でしたが、現在では30万件以上に増えています。

それら世界の第三者認証の発行について、近年の傾向を教えてください。
第三者認証規格の中でも代表的な規格であるISO 9001やISO 14001などは、一部の地域で成長しているところがありますが、全体としては普及が進んだ結果、緩やかな増加にとどまっています。現在めざましい成長をしているのは、特定分野のセクターの規格です。具体的には、食品衛生分野の規格であるISO 22000やIT分野の規格、鉄道関連のIRISなどの認証取得が増えています。IQNetリミテッドの主力サービスであるSA 8000も、特定の市場や地域で人気が高まっているものの一つです。
SA 8000は日本ではあまり馴染みのない方が多いのですが、どのような規格なのでしょうか?その概要を教えてください。
SA 8000のSAは社会的説明責任(Social Accountability)の略で、企業の倫理的側面、特に労働者の人権や雇用環境に特化した認証規格です。具体的には、児童労働や強制労働の撤廃、労働者の健康と安全、団結権などについて、第三者機関の審査によって認証するものです。マネジメントシステム規格においては、経済活動の面で「品質」にフォーカスしたISO 9001、「環境」の側面にフォーカスしたISO 14001がもっともポピュラーですが、この2つの側面だけではなく、従業員や人権、企業倫理といった側面にも配慮してこそ、真に持続的な発展が可能であるという考え方から開発されたわけです。このことは時にトリプルボトムライン(社会、環境、経済)と呼ばれます。
SA 8000の認証取得数は、世界の中でも地域的な偏りが比較的高いようですがこれはなぜですか?
たとえばヨーロッパの中ではイタリアでの取得が特に多いのですが、ここでは雇用環境に関心が高い組織が多いことに加えて、政府の方針として SA 8000の取得を推奨していることが多数の認証が発行されている要因となっています。SA 8000の認証数に差が出るのは、その地域における労働者の人権への関心の高さに加え、認証取得組織への補助金支給といった政策的な後押しの有無、優秀な人材を採用するためのアピール効果を期待するなど、さまざまな要因が絡んでいると思います。
SA 8000の認証は日本企業にどのようなメリットがあるでしょうか?

SA 8000が労働者の権利に関する事柄を認証するものであることから、すでに雇用環境について十分に整備されている国々ではあまり普及していないという事実があります。しかし、最近の動きとして、開発途上国において国際企業が労働者の権利について配慮していることを示すために認証取得するケースが増えています。中国やインド、ブラジルなどでの取得が増えているのはそのためです。これらの国々で活動するのであれば、日本企業にもメリットがあるかもしれません。

IQNetでは、SA 8000とは別に、類似のサービスとしてBSCI(Business Social Compliance Initiatives)という製品も用意しています。こちらはグローバルな取引を行う組織が、リスクの高い国々のサプライヤーの社会的責任についてモニターするための規格であり、先進国、開発途上国にかかわらずサプライチェーンの管理が求められる組織の方々におすすめします。SA 8000との違いは、 BSCIが主要な世界的な小売業者によって運営されているサプライヤー監査のスキームであることです。

日本ではSA 8000と類似の分野の規格として、現在策定が進められているISO 26000が注目されています。SA 8000とISO 26000との関係をどのように位置付けていますか?

ISO 26000はさまざまな組織の社会的責任についての規格であり、労働者の雇用環境についてもカバーしている点では共通性があります。しかし、そのスキームについては、大きな違いがあります。というのは、ISO 26000はベストプラクティスを実践するために第三者認証を目的としないガイドライン規格であるのに対し、SA 8000は第三者認証を必要とする認証規格であるという点です。

なお、各国の認証登録機関の中にはこのISO 26000をベースに、独自に第三者認証プログラムの開発を進めているところもあるときいています。

IQNet リミテッドでは、どのようにして新しい認証サービスを開発しているのですか?

トニー・ディ・パルマ氏

まず、IQNetの各パートナーの意見を収集するところから始めます。どのような分野や製品についてニーズがあるのかを確認したうえで、ニーズの高いものはマーケティングや製品開発に関する常任委員会に諮って、サービスの開発に着手するか決めていきます。

新製品開発には、時間とコストもかかるわけですから、IQNetのパートナーが特定の製品にどの程度ニーズを感じているのかの情報は非常に重要です。具体的には、37のパートナーのうち少なくとも15以上の認証機関から要望があるというガイドラインもあります。

このほかにも、新製品に関する市場の将来性や開発にかかる費用や時間、さらに競争力の観点から類似のサービスの有無といったさまざまな情報をもとに新製品開発を行うが決定されます。

今後成長が期待される認証サービスを教えてください。

SA 8000のほか、先ほどご紹介したBSCIはすでに利用している組織もあり普及が進んでいます。さらに、今後有望と考えられるのがアレルギー物質に過敏に反応する消費者のためのアレルゲン・マネジメントに関するプログラムです。多くの国で食の安全性に関心が高まり、またアレルギー物質に敏感な人が増えているなか、アレルギー物質に対する接触の管理を適切に行うことが重要になっています。アレルゲン・マネジメントは、食品、化粧品、薬品などのメーカーやホテル、飲食店などで、製品に含まれるアレルギー物質の種類や量についての情報開示、アレルギー物質を最小限に抑えるための取り組みが行われているかをモニターし、適正な管理をしている組織に認証ラベルを交付するというスキームをもっています。

このほかにも事業継続に関するスキームや、マネジメントシステムのパフォーマンスのレベルを世界の同業種の組織と比較できるベンチマークのスキームなども、今後の伸長が期待できる分野です。

最後に、世界的な認証機関ネットワークとして、IAFやISOに対してどのような働きかけをしているのか説明してください。
私たちはIAFやISO/CASCOに対して、長年認証機関の相互協力組織として、リエゾンメンバーとして関わっています。世界中のIQNetパートナーから、さまざまな規格についての情報を集め、これらの国際機関に対してフィードバックしています。パートナー各機関の協力で、大変価値ある情報がフィードバックされているということでよく知られています。

ご協力ありがとうございました。


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