情報誌 ISO NETWORK Vol.21
JIS Q 9100:2009移行に関するご案内

JQAはこのたび、航空宇宙産業向けの品質マネジメントシステム規格であるJIS Q 9100:2009の登録審査およびJIS Q 9100:2009への移行審査の受付を開始しました。規格改正の背景や改正のポイント、審査を受ける際の留意事項などについて一問一答形式で解説します。
Q&A
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JIS Q 9100とは、どのような規格ですか?
また、JIS Q 9100の2009年版はどのような背景や意図のもとで改正されたのですか?JIS Q 9100は、ISO 9001をベースに航空宇宙産業特有の要求事項を織り込んだ品質マネジメントシステム規格です。航空宇宙産業の品質に関する共通要求事項の統一化を目的として、1998年に世界の主要な航空宇宙メーカーがIAQG(国際航空宇宙品質グループ)を設立し、航空宇宙産業の共通の要求事項としてIAQG 9100を制定しました。JIS Q 9100は、IAQG 9100の日本地域規格として内容をそのまま日本語化して2000年に制定されたもので、米国AS9100および欧州EN9100と技術的に同等です。
IAQGは、2004年版の改正以降、ISO 9001の改正の動きに伴い、業界特有の要求事項の追加および明確化について検討を行ってきました。特にヨーロッパの宇宙関係業界、北大西洋条約機構等からの要求事項を追加することについて検討していましたが、ISO 9001:2008改正時に合わせて実施することとしました。
IAQGは、(1)ISO 9001:2008変更事項の取り込み、(2)陸・海ベースのシステムを含む、防衛分野への適用範囲の拡大、(3)IAQGの活動戦略であるOTOQD(On-Time, On-Quality Delivery)への整合、(4)ステークホルダーのニーズに基づく要求事項の追加、(5)要求事項の明確化を目的として、IAQG 9100規格の改正を行いました。JIS Q 9100:2009には、その改正内容が反映されています。
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審査の開始まで、規格発行から1年半が経過していますが、その理由は何ですか?
JIS Q 9100:2009は2009年4月20日に改正されましたが、審査方法や審査報告書様式を規定する、IAQG 9101改訂版「品質マネジメントシステム 航空、宇宙及び防衛分野の組織に対する審査要求事項」(国内ではSJAC9101Dとして2010年3月31日に発行済み)の発行が当初予定より遅れました。また、認定基準のベースとなるIAQG 9104-1の発行が当面見込めなくなった(現状、2011年4月以降に発行予定)ことを踏まえ、IAQGは、IAQG 9104-1と切り離して、IAQG 9100、IAQG 9101改正版への移行を行うことを決定し、この決定に基づき、IAQG補足規定001の改正を行いました。このような経緯により、JIS Q 9100:2009の審査開始まで、規格改正から1年半が経過することになりました。
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規格の主な変更点を教えてください
改正内容が多岐にわたっているため簡単には説明できませんが、例えば、特別要求事項とクリティカルアイテム、顧客/法令・規制要求事項、品質および納期どおりの引渡しに関するパフォーマンスの測定と処置、顧客満足の監視に使用する情報と改善計画、プロジェクトマネジメント、リスクマネジメント等の要求事項が追加・変更されています。
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移行審査のスケジュールを教えてください
移行審査は2010年12月に開始予定です。移行期限は2012年6月30日です。
JIS Q 9100:2009移行審査スケジュール
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移行審査の申し込み方法を教えてください
登録内容変更申込書と事前情報(記入様式あり)を審査の3ヵ月前までにお客さまサービス担当までご提出ください。
事前情報の主な内容
- 航空・宇宙・防衛の売上高の割合
- 航空・宇宙・防衛の人数
- 主要顧客リスト(上位5社)
- 主要顧客に関するパフォーマンスの傾向(過去12ヵ月の品質および納期どおりの引渡しに関するパフォーマンスの傾向)
- 品質マネジメントシステムについて顧客からの承認状態(特殊工程の認定など)および、追加要求事項
- リスクの高いプロセス/製品、リスクマネジメント、プロジェクトマネジメント、クリティカルアイテム他の状況
等
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審査手法に変更点はありますか?
不適合の定義、取り扱いおよび審査報告書について、下記の変更を行います。
不適合の定義、取り扱い
- プロセスの有効性レベルを5段階で判定し「2」、「1」の場合は不適合として指摘
- 是正処置(登録・更新審査時:実施計画30日以内、実施完了60日以内、クローズ90日以内、定期審査時:実施計画30日以内、実施確認は次回)
- 封じ込め処置※(7日以内に処置内容を決定、14日以内にチームリーダーの合意)
審査報告書の改訂
- SJAC9101Dで規定された審査報告書を作成します。従来から追加されたものとして、プロセスの有効性評価報告書(PEAR)、QMSプロセスマトリックス報告書があります。
※封じ込め処置:
不適合の影響を抑制・緩和し、また顧客における運用を保護する処置(問題の悪化を食い止める)。これには修正、即時の是正処置、即時の伝達および不適合の状況が悪化していないかという検証を含む。不適合の性質により要求される場合がある。 -
審査工数(料金)はどのように計算されますか?
移行審査、登録/定期/更新審査について、それぞれ下記の方式で算定します。
移行審査工数
- 定期審査と同時の場合
IAF MD5※1に規定されている登録審査工数の50%(通常の年1回定期審査の約1.5倍)に、JAB MS101-2010※2に規定されている登録審査用の追加工数の100%を加算します。
- 更新審査と同時実施の場合
IAF MD5に規定されている登録審査工数の80%(通常の更新審査の約1.2倍)に、JAB MS101-2010に規定されている登録審査用の追加工数の100%を加算します。
登録/定期/更新審査工数
登録/定期/更新審査工数は、IAF MD5で規定されている工数にJAB MS101-2010に規定されている追加工数を加算したものが最小の審査工数となり、これに受審組織の規模、製品の違いを考慮し、受審組織と合意して審査工数を決定します。
- ※1 IAF MD5:
「マネジメント認証機関に対する認定の基準」についての指針―QMSおよびEMS審査の工数― - ※2 JAB MS101-2010:
マネジメントシステム認証機関に対する認定の補足基準―航空宇宙品質マネジメントシステム―
移行審査を受審するまでのステップ