情報誌 ISO NETWORK Vol.22

はい。ひとつは工場など拠点単位でのものづくりのシステムから、よりコーポレート（全社的、法人組織的）な視点でシステムを運用する動きです。ISO 9000シリーズが2000年の規格改定で、それまでの「品質システム」から「品質マネジメントシステム」となって昨年12月で10年が経ちました。この間に先進的な企業や大手企業を中心に、従来の工場単位のものづくりや製品品質の視点から、より積極的に企業全体あるいは企業グループ全体の経営をひとつの品質マネジメントシステムとする動きが生まれています。

規格がマネジメントシステムとなり組織の経営に使いやすくなったことに加えて、社会的な要請から、企業としてのポリシーや理念を掲げ、ガバナンス強化や社会的責任（SR）を尊重する企業が増えていることが背景にあると思います。付け加えますと、そのような企業の中には自らが目指す品質を「業務品質」と呼んで、「製品品質」と区別している企業も見受けられます。

もちろん、ものづくりや製品品質がもう十分だと言っているわけではありません。やはり、圧倒的多数の企業ではものづくりや製品品質を追求することで顧客や市場のニーズに応えようとしています。コーポレートな動きは、大手企業や先進的な企業が行っているマネジメントシステム活用のひとつの新しい動きと見ています。

もうひとつは、マネジメントシステムの登録活動範囲（SCOPE）に営業機能や営業部門を含めるシステム拡大の動きです。従来、製造業では営業が登録活動範囲に含まれていないケースが多く見られました。しかし、最近になって営業を単なる“契約行為”と位置づけるのではなく、顧客へのサービス提供とする考え方に基づいて、ISO 9001のマネジメントシステムに組み込む動きが広がっています。

基本的には品質の概念が広がり、無形の利便性を提供する競争が始まっているということではないでしょうか。例を挙げれば、家電産業では、品質は製品を販売する時点では終わらず、廃棄されるまでのプロダクト・ライフサイクル全体を見通した品質として管理することが求められています。このようにプロダクト・ライフサイクル全体の顧客満足を高めるためには、社会の要請や期待なども正確にとらえて、設計や製造部門に伝えるだけでなく、市場と顧客に対し常に情報を発信していく姿勢が企業として必要であり、それを担うのが営業部門であるという訳です。このような動きは顧客満足を超えて、顧客の期待以上の「カスタマー・ディライト」を実現しようとする日本的品質競争が後押ししているかも知れません。

まだ改定内容が決まっていないため、現時点では具体的になっていません。過去の規格改定時には、全国数箇所の規格改定説明会に加えて、JQAのウェブサイトとJQAメンバーズサイトで、ISO/TC 176（ISO技術委員会）の改定作業の進捗とその内容、改定の背景・趣旨、規格のポイント解説、新規格への移行に関する情報などを提供してきました。今回の情報提供の予定は改めてご連絡いたしますが、皆さまがISO 9001を一層ご活用するための検討と準備の時間を十分とれるようにできるだけ早い情報提供を実施します。