情報誌 ISO NETWORK Vol.23

JQA Business Frontline ISO 39001、交通事故の撲滅を目指し2012年秋IS発行へ

2012年11月にIS(国際規格)として発行予定のISO 39001は、道路交通安全のために組織が取り組むべき要求事項を定めた規格です。運輸事業者だけでなく、ショッピングセンター、レジャー施設、メーカーなど、ほぼ全産業を対象としています。JQAでは、このほど正式な規格化に向け、パイロット審査を開始しました。

企画・推進センター 企画調整部 商品開発室 室長 江波戸啓之企画・推進センター
企画調整部 商品開発室
室長 江波戸 啓之

ISO 39001は、道路交通事故による死者、重大な負傷者の発生根絶を究極の目標とする国際規格です。対象となるのは、運輸・運搬に携わる事業者はもとより、社用車で営業や自社製品の配送を行う企業、さらに道路の設計・施工や関連作業、輸送需要が発生する商業施設の運営なども含めた、道路交通安全に関わるあらゆる組織です。本規格では、マネジメントシステムの構築、実施、改善など、道路交通安全に関して組織が取り組むべき基本的な要求事項を定めています。

現在、ISO専門委員会であるISO/PC 241で策定作業が進められており、2011年7月にDIS(国際規格原案)が発行されました。ISO/PC 241のメンバーは、すでにマネジメントシステムを用いた道路交通安全で高い実績を有しているスウェーデン(議長国)や日本をはじめとする37ヵ国と、WHO(世界保健機関)など11団体。今後のスケジュールとしては、2012年2月に南アフリカで開催が予定されている国際会議のあと、FDIS(最終国際規格案)が発行され、同年11月、正式なISO規格となる運びです。

一方国内で、国際会議に提出するコメント(意見)を審議しているのは、国土交通省の主導によって設立された「ISO/PC241 国内審議委員会」です。

JQAは、ISO/PC 241国内審議委員会の委員として、2009年7月の設立当初から、関係省庁、業界団体、学識経験者等とともに、認証機関として唯一、規格の策定に携わってきました。こうした実績をもとに、JQAでは、ISO 39001の正式な国際規格化に向け、希望する組織に対して、DISによるパイロット審査を開始しています。

ISO 39001認証取得のメリット

ISO 39001の導入による最大のメリットは、なんといっても交通事故によるリスクの軽減です。企業内で交通事故がおきた場合、被害者の治療費や慰謝料、被害物の修理代といった直接的な損失に加え、企業イメージの低下、取引先からの信用失墜、労働力の喪失さらには翌年以降の自動車保険料上昇など、さまざまな間接的な損失が発生します。従業員が起こした事故や敷地内で発生した事故でも、企業が管理責任を問われることがありえます。

ISO 39001の規格策定には、全世界の道路交通安全のエキスパートが参加しています。規格には、過去の研究、経験則から得られた効果のある対策が「パフォーマンスファクター」(道路交通安全に大きく寄与する要因)としてカタログ化されており、事業者は自社の業態に合った交通安全の対策を選ぶことができます。実際に世界で効果を上げた対策をベースに策定された規格なので、非常に分かりやすく、交通事故予防に効果が出やすいといえます。ISO 39001に取り組むことで交通事故予防策が実現すれば、企業価値の向上やコスト低減なども期待できます。

パイロット審査の趣旨と意義

ISO 39001制定の目的は、世界の交通事故による死亡者、重傷者の撲滅にあります。その目的達成のためには、多くの組織に規格を活用してもらわなければ意味がありません。ISO/PC 241では、2020年までに世界で10万件の認証を目指しています。

また、規格を世界に広めるためには、よりユーザーフレンドリーな規格、使いやすい規格にする必要があります。そこで、ISOのほかの規格にはない新たな試みとして、国際会議でパイロット審査の実施が決議されました。DISの段階で組織に使ってもらい、「ここが使いづらい」「ここは何を言っているのか分からない」といった規格の改善の余地がある箇所についての意見を募集して、FDISに反映させていくものです。

将来的にISO 39001の認証取得を検討されている組織は、正式な規格発行前にパイロット審査を受審することで予行演習になります。もし、パイロット審査において不適合が出ても、登録審査には全く影響しませんし、いち早く取り組むことにより、道路交通安全への意識が高い会社であると世界的な評価も高まります。

くり返しになりますが、JQAは、ISO/PC 241国内審議委員会の設立当初から策定に参画し、国内で唯一ISO 39001のパイロット審査を実施しています。今後は、FDIS化と同時に認証サービスを開始するべく準備を進めておりますので、認証取得をご検討の場合は下記「お問い合わせ先」へお気軽にご相談ください。

NKSJ リスクマネジメント株式会社主催ISO 39001 セミナー盛況のうちに終了
― 希望者にはテキストを差し上げます

2011年9月に全国3都市(東京、大阪、名古屋)で「国際認証規格ISO 39001の動向」と題し、NKSJリスクマネジメント株式会社がセミナーを開催しました。当機構の江波戸も講師を務め、東京会場は定員を上回る申し込みで追加開催を行うなど、物流・運送事業者に限らず、社用車を多数保有する企業など幅広い業種の方の参加がありました。規格発行を前にISO 39001に関する関心の高さが伺えます。

プログラム

  • わが国におけるISO 39001制定の経緯と概要
    独立行政法人自動車事故対策機構 審議役 後藤 洋志氏
  • ISO 39001規格のポイントと海外動向(ISO 39001規格の要求事項と各国の動向)
    一般財団法人日本品質保証機構 企画・推進センター 江波戸 啓之
  • ISO 39001規格の自動車事故防止効果、認証取得準備と他のISOとの両立
    NKSJリスクマネジメント株式会社
    自動車リスクコンサルティング本部 企画開発部 部長 入口 秀俊氏
ISO 39001テキスト

希望者には当日使用したテキスト(冊子)をお送りしますので、下記お問い合わせ先までご連絡ください。なお、数に限りがございますので、ご関心のある方はお早めにご連絡をお願いします。