情報誌 ISO NETWORK Vol.23

[巻頭に寄せて]JQAの登録でよかった、という審査を目指して ―審査を通じてお客さまに価値提供を

JQAが審査サービスを開始してから20年余が経過し、ISO認証制度は普及・定着してきました。お客さまを取り巻く事業環境が変化する中で、マネジメントシステム審査サービスはどのような役割を果たすべきかが、日々問われています。本年4月に審査事業を統括する理事に就任した森廣義和に、これからの審査のあり方を聞きました。 理事・審査事業センター所長 森廣義和

Q&A

今後、JQAとして審査にはどのような考え方で臨みますか。

審査を通じてお客さまに提供する価値というものをあらためて意識したいと考えています。5,6年前までは、「付加価値」と呼んでいましたが、それでは、なにかに付け加えた価値のようで、違和感を感じていました。そうではなく、審査そのものに価値があるはずです。そこを強調したいと思います。

審査を通じて提供できる価値とは、お客さまにマネジメントシステムを改善する機会を提供し、お客さまのパフォーマンスを上げることです。マネジメントシステムの運用に関して、こういう運用ができるとパフォーマンスが得られます、と改善ポイントを示していくわけです。そこでは、将来のリスクを見越した指摘をすることもあります。

多くのお客さまは審査にそうした価値を求めていらっしゃいますし、審査で改善ポイントが見つかり、それをきっかけに「ISOは役に立つ」と思っていただけるはずです。わたしたちはお客さま固有の専門技術をすべて理解しているわけではありません。ただ、わたしたちは数多くの組織をみて、システムを使った管理技術に精通しています。そして、管理技術はさまざまな組織に応用できる部分があり、お客さまに改善のポイントをご提供することができます。

業務の流れを中心にすえたプロセス審査を

国内のISO黎明期には、「○○をしなければいけません」「やっていますか?見せてください」という流れで、要求事項の項番に沿って審査を進めることが一般的でした。プリミティブな審査だったわけです。だからこそ、審査そのものに価値があるというより、そこになにか別の価値を付け加える必要がある、という議論が行われていたのでしょう。

JQAでは、ISO 9001規格が2000年版に改定されたころから、そうした審査の進め方を見直しました。お客さまが運用するマネジメントシステムの流れを聞き、理解しながら、それに沿って、要求事項が満たされているかどうかをみていく審査にあらためました。要求事項ではなく、業務の流れを中心にすえて、そこから要求事項への適合性をみていく審査です。これをISO 9001の2000年版の概念であるプロセスアプローチの関係から、JQAではプロセス審査と呼んでいます。

このプロセス審査をしっかり実現することにより、初めてお客さまに対するさらなる価値提供ができると信じています。

今後は、プロセス審査の考え方を基本に、どのような審査に力を入れていきますか。

複合審査と統合審査です。

複合審査とは、複数の規格を同時に審査するものです。要求事項の中で共通する部分を併せて審査するので、審査の効率化を図ることができます。その結果、お客さまの負担を減らすことにつながります。

例えば、多くのお客さまがISO 9001規格とISO 14001規格の認証を取得しています。審査はそれぞれ別個と考えられている場合がありますが、同じ認証機関が同じ日に審査するだけでも、審査の効率化を図ることができます。

複合審査をさらに推し進めたものとして統合審査があります。これは、システムを統合して運用されているお客さまを対象に、業務の流れに沿って、お客さまのマネジメントシステムそのものを審査するものです。

統合審査とプロセス審査

統合審査はまさに、プロセス審査のJQAだからこそ取り組めるものです。プロセス審査では業務の流れを中心にすえますから、例えば、あるプロセスに注目してISO 9001とISO 14001の審査を同時に実施することができます。複数のISO規格にまたがる審査をシームレスに進めていくことができるわけです。

そもそも統合マネジメントシステムは、規格間のトレードオフ解消や業務の全体最適が図られるというメリットがあります。加えて、複数のマネジメントシステムを統合して運用するので、審査の効率化によって審査対応の負担を減らすことができるうえ、マネジメントシステム運用のトータルコスト削減にもつながります。すでに統合したシステム運用を進められているお客さまからは、「わが社らしいマネジメントシステムができた」とのご意見をいただいています。

このような審査手法は、数ある認証機関の中でもまだまだ一般化していないと思います。業界の中で先んじることができるのではないかと期待もしています。複合審査を受けていただいたお客さまは、次に統合審査に向けた準備に取り組まれている場合が多いので、JQAとしても統合審査に力を入れていきたいと考えています。

審査サービスの新しいラインナップを紹介してください。

「組合せ審査」を新たに開始しました。現在対応しているのは、①情報セキュリティマネジメントシステム規格のISO/IEC 27001に個人情報保護マネジメントシステム規格のJIS Q 15001を組み合わせる場合、②ISO 9001やISO 14001にJAMP(アーティクルマネジメント推進協議会)で定める製品含有化学物質管理ガイドラインを組み合わせる場合、③ISO 9001に苦情対応マネジメントシステム規格のISO 10002を組合せる場合の3種類です。すでに認証取得しているISO規格の定期審査や更新審査に併せて、組み合わせる規格やガイドラインの審査を実施します。

これまでは、新しい規格が登場すると、それにフルコースで対応してきました。しかしそれでは、その規格に興味をお持ちのお客さまがフルコースで準備をすることになります。そうした中で、「準備には手間をかけたくないが、新しい規格のエッセンスは取り入れたい」といういわばプラスワン志向のニーズがあることが分かってきたので、組合せ審査としてサービスを開始しました。新しく取り入れようとするマネジメントシステム規格の認証取得に向けた準備を一から始めるのに比べると、お客さまの負担を軽減することができます。

今後も業種や社会ニーズにターゲットを絞った規格の発行が予想されますが、JQAではすでに取得された認証をベースにお客さまが希望する規格をプラスした審査を提供していく予定です。なお、今号では、JQAでいち早く組合せ審査を受審されたお客さまの事例を紹介していますので、ぜひご覧ください。

組合せ審査による認証取得事例

IMS審査サービスを提供

JQAでは、システムを統合して運用されている組織を対象に、統合システムの運用を審査するIMS(Integrated Management System)審査サービスを提供しており、現在82の組織にIMS運用証明書を発行しています。登録には以下の5つの運用基準を満たしている必要があります。

【5つの運用基準】

  1. 各規格の登録事業者、所在地を同一にし、主たる業務を含めること
  2. 経営者および管理責任者のもとで、一元的な管理体制を構築すること
  3. システム全体にプロセスアプローチおよびリスク分析・評価を適用すること
  4. 方針・目的・目標は、各マネジメントシステム間で整合がとれていること
  5. 統合されたマネジメントシステムとして内部監査とマネジメントレビューを実施すること
全社統合に対する意識の高まりがありますが、これに対応したサービスはありますか。

製造業の場合、ISO 9001にしてもISO 14001にしても、工場単位で認証取得しているのが大半です。そうした中で、コーポレートとして組織全体のガバナンス強化の観点や事業拠点間のマネジメントシステムの統合に向けてISO認証を活用できないか、とご相談を受けています。そのために新しい仕組みを導入するのはたいへんですから、すでに取り入れているISO規格の仕組みを活用できるとJQAも考えています。

具体的には、いくつかのパターンが考えられます。①工場単位の認証をそのままに、認証組織をゆるやかに連合化するパターン、②工場単位での複数の認証を、本社を中心とする一つの認証に組み替えるパターン、③その中間で一つの認証に向けて段階的に認証を組み替えるまでのパターンです。そこでは、JQAは審査を通じて例えば本社の方針がきちんと工場に伝わっているか、現場の意見が本社に届いているのか、といった点をみて、コミュニケーションの改善点や潜在的なリスクを報告することができます。

すでに、事業環境の変化への迅速な対応や、組織再編などに向けた準備という面から、ISO規格を新たな視点で柔軟に利用いただいている組織もあります。

お客さまへの価値提供として内部監査の活用を提唱していますが。

内部監査の活用を提唱

1年くらい前から、「内部監査」「内部監査」と、口をすっぱくしてあちこちでその活用を提唱しています。内部監査というのは、日常業務の中でなじみがなく、ISO規格の認証取得をきっかけに初めて取り入れる、というお客さまが少なくありません。それだけに、記録を審査員に見せる必要があるから内部監査をやる、というような形骸化に陥りがちです。そうした状況を、内部監査の活用を唱えることで打ち破りたい、と思っています。

規格では内部監査の実施を要求しています。したがって、内部監査をお客さまの組織を良くするツールとして活用していただければ、審査と連動する形で改善活動を展開できるでしょうし、さらには、将来、審査とコラボレーションできるようになるかもしれません。ただ、審査は年1回にすぎませんから、その段階でなにかやろうとしても限界があります。むしろ、お客さまの組織内で恒常的に、改善活動が展開されていく必要があります。そのために内部監査を十分活用していただきたいと思っています。

JQAは内部監査に関して多くのお客さまが問題意識をお持ちだと考えています。この一年で内部監査についての無料セミナーを全国4都市で計15回開催、600名以上のお客さまが参加され、ご好評をいただいています。引き続きセミナー等を通じて内部監査の活用を提唱していきたいと考えています。

内部監査によくある誤解 ・ISO 規格の全項番を毎回見る必要がある。・外部審査の前に実施しなければならない。・トップマネジメントを監査しなければならない。・トップマネジメントから内部監査が独立していなければならない。・内部監査員はISO 規格に精通していなければならない。・解決策を教えてはならない。

内部監査成功のポイント ・トップマネジメントの問題意識に答えを出すこと − 監査目的の明確化 − 業務の流れに沿った監査 − 監査員の適性と育成・内部監査をプロセスとして管理すること(継続的改善) JQA 内部監査成功セミナー資料より

ISO規格の本来あるべき姿を追求していきたいという意欲を感じます。

企業に勤めている友人に近況を伝えると、とりわけ製造業に携わる人たちにISO審査の評判が良くない、と思い知らされます。やらされているという感覚が強いのでしょう。それは、審査に携わる者として肝に銘じる必要があると思っています。

しかし、ISO審査は本来、そういうものではないはずです。JQAは今まで述べたような、プロセス審査を基本とした多様な審査に加えて、内部監査の活用などセミナー等を通じたISO活用方法の提案によってお客さまに価値提供を行っていきます。その結果としてJQAの登録で良かった、と言っていただけるような審査を目指していきます。

森廣 義和 略歴

1977年 明治乳業株式会社入社
1992年 株式会社カーギルジャパン入社
2003年 財団法人日本品質保証機構入構
2007年 同 マネジメントシステム部門
認証センター認証部長
2008年 同 マネジメントシステム部門
認証センター副所長
2011年 一般財団法人日本品質保証機構
理事・審査事業センター所長

JRCA ISO 9001主任審査員、CEAR ISO 14001主任審査員、JFARB ISO 22000主任審査員


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