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JQAが加盟しているIQNet(国際認証機関ネットワーク)が昨年12月、社会的責任に対する第三者認証の規格として「SR10」をスタートさせました。社会的責任に関するガイダンス文書「ISO 26000」との関係など、「SR10」の概要を紹介します。
SR10は、社会的責任に関するガイダンス文書として定められたISO 26000のコンセプトを踏まえた社会的責任マネジメントシステム規格です。
SR10の最大の特徴は、トップマネジメントが社会的責任を果たすという観点で意識すべきポイントを、利害関係者に関して組織が満たすべき要求事項という形で明らかにした点です。
もともとISO 26000が第三者認証を前提にしないガイダンス文書の形式に留められたのは、主に次のような考えから、といわれています。
ところが、ISO 26000が示した方向性はあまりに広範にわたるもので、組織にとって利用しにくいのが実情でした。そこで、SR10では利害関係者を9つに絞り込み、それぞれに関して組織が果たすべき要求事項を分類・整理することで、ISO 26000のコンセプトを、現実の組織運営に適用しやすくしたわけです。
IQNetでは今後、SR10技術諮問委員会を設置し、規格を運用しながら必要に応じて、その仕様や認証スキームの改定に取り組んでいくことになっています。
SR10で定めている利害関係者は次の9つです。
具体的な要求事項はこれら9つの利害関係者ごとに定められています。「従業員」を例に取れば、次のような事項があげられています。
ISO 26000では約400項目にのぼる「~することが望ましい・~したほうが良い(Should)」という点が記載されていました。SR10はこれらを9つの利害関係者ごとに分類・整理したうえで、「~しなければならない・~とする(Shall)」に置き換えています。
ただし、関連する規格認証を得ている場合には、審査段階で自ずと「適合」とみなされる箇所も生じます。
一つは、「従業員」で規定されている「安全衛生」。OHSAS 18001の認証を得ている場合は、関連する要求事項が「適合」とみなされます。もう一つは、「環境」。ここで規定されている要求事項は、ISO 14001の認証を得ている場合も関連する部分で「適合」とみなされます。
また、SR10はISO 9001と同じようにシステムレベルでのPDCAサイクルを回す仕組みを取っています。そして、ISO 9001の第7章にあたる部分で9つの利害関係者に関する要求事項を管理する仕組みになっています。そのため、すでにISO 9001の認証を得ている組織にとっては、取り組みやすくなっています。
社会的責任マネジメントシステムに関して、この規格に基づいて第三者認証を取得するメリットは、どこにあるのでしょうか。具体的には、次のような数多くの点が考えられます。
利害関係者に関する要求事項が満たされていて初めて、事業継続は保証されます。第三者認証によってそれが確認できたということは、その組織が信頼できるものであることを社会に示す証になります。
SR10のような規格に基づいて社会的責任マネジメントシステムに対する第三者認証を得ようというニーズは、社会的責任に関する意識の高いEU諸国で目立ち始めています。
スペインの認証機関では5月段階ですでに16の組織を認証済みで、さらに15の組織から審査依頼を受けているといいます。また、ドイツの認証機関ではこれまですでに2つの組織を認証済みです。
IQNetに加盟する各国の認証機関は、IQNetとの間で「SR10 Agreement」を結ぶことでSR10に基づく審査・認証を実施することができます。6月段階で、37の認証機関のうち12機関がこの締結に至っています。
社会的責任マネジメントシステムに対する第三者認証に関心を示す企業は、国内でも現れ始めています。EU諸国を相手に活動を展開する組織が今後、認証取得の必要に迫られるようになることは十分に考えられます。
JQAではこうした状況を受けて、すでに審査員の養成や市場ニーズの把握に取り組み始めています。Webサイトでは、SR10に関する情報の提供に努めていきたいと考えています。