カーボンフットプリント/環境フットプリント

審査員対談

対談者紹介

  • グリーンエネルギー認証室長兼環境審査課 橋詰 祥子
    2015年11月:CDM審査員登録
    2019年1月:主任GHG妥当性確認・検証人登録
    2021年12月:主任システム審査員登録
  • サステナビリティ営業課長 塩見 秀敏
    お客さま対応歴21年

日ごろからさまざまな審査に取り組む橋詰さんに、製品レベルとその算定を実施する組織のシステムを対象とした「カーボンフットプリント/環境フットプリント システム認証」について、利用者の視点からインタビューしました。

(塩見)
さっそく、カーボンフットプリントや環境フットプリントなどの製品レベルの検証について、聞きたいと思います。
GHG排出量において、組織レベルの対象範囲で検証する場合と、製品レベルを対象とした検証では、どのような違いがあるか簡単に教えてください。

(橋詰)
対象範囲が組織レベルと製品レベルで大きく違う点は、GHG排出量を算定する対象の範囲や境界です。組織レベルであれば、基本的に組織全体を範囲としたうえで、少量の排出源であれば対象からの除外を検討するなどの決定をしていきます。製品レベルであれば製品単位、機能単位などで対象範囲を決定します。

(塩見)
直接モニタリングしたデータ等の一次データで算定しているか、文献や公表されたデータベース等の二次データを活用するかによって、算定結果がかなり変わりそうですね。製品単位での比較になると、競合他社との間で争いが起きそうな気がします。

(橋詰)
そのとおりです。製品の算定は、自社製品の比較だけでなく、他社製品との比較が目的となることも多く、製品のライフサイクル(原料から製造・使用・廃棄段階)の各プロセスで適切に算定と配分を行うことが重要になります。そのため、業界・算定者間で不平等がないように「製品カテゴリールール(PCR)」が策定・公表されており、製品の算定が認定PCRに準拠していることが求められます。

(塩見)
自社で「良いとこどり」をした算定を行うと、虚偽表示やグリーンウォッシュだと言われかねないので、このようなルールの必要性をとても感じます。共通ルールの基準や規格について詳しく教えてください。

(橋詰)
基準については、例えば、製品カテゴリールール(PCR)開発の国際規格としてISO 14027、製品のカーボンフットプリント算定としてISO 14067の国際規格などがあります。日本では、これらに準拠した制度として、『SuMPO環境ラベルプログラム』という制度がつくられており、第三者認証後に製品レベルの環境情報をマークで見える化しています。製品比較の目的であれば、信頼性や客観性を高めるために、この制度に参加することが考えられます。

(塩見)
JQAは『SuMPO環境ラベルプログラム』で、システム認証機関として登録をしていますが、製品レベルのシステム認証審査とはどのようなものですか。

(橋詰)
第三者審査は、個品別方式とシステム認証方式の2つがあります。個品別方式では、個々の製品ごとの環境データ等が認定PCRや関連基準に準拠していることを確認します。システム認証方式では、複数の製品について算定・内部検証・公開するシステムを構築し、維持管理する仕組みを審査します。もちろん、あわせて個々の算定結果もサンプルで確認します。

(塩見)
対象製品が多いと、システム認証方式の審査希望が出てきそうですね。システム審査員に求められることは何でしょうか。

(橋詰)
『SuMPO環境ラベルプログラム』制度のシステム審査員には、専門的立場での5年以上の業務経験と倫理性や観察力などの個人的特質、研修の受講や試験の合格などの資格基準が定められています。また、LCA、製品やプロセス、品質・環境マネジメントシステムの知識や審査技能等も求められます。これらは、同制度にて要求事項の規定や研修プログラム、資格試験などがあるので活用しています。

(塩見)
審査にあたり、苦労した点を聞かせてください。

(橋詰)
事業者が算定した製品のライフサイクルの各プロセスでの排出量を素材レベルまで確認するので、細かいチェックが多いことです。加えて、組織の力量や算定体制、内部検証の有効性など、マネジメントシステムを確認する大枠を捉える視点も必要となるため、審査では両方のバランスが必要となるところでしょうか。

(塩見)
製品のカーボンフットプリントや環境フットプリントに関して、お客さまから3つのニーズが出てくるのではと考えています。
①国内公共調達(グリーン購入)へのカーボンフットプリント検証
②欧州規制に対応する第三者検証
③サプライチェーン内の製品/サービスのGHG排出量報告(Scope3を含めた一次データの算定報告)
JQAは、このようなニーズに対応できるでしょうか。

(橋詰)
仕様などの条件は相談となりますが、前向きに対応していけると思います。
企業の開示情報がグリーンウォッシュと非難されることも増えてきており、第三者検証のニーズは高まっていると思います。
そういう意味で、①の国内公共調達や②の欧州の規制については、制度側の目的に応じてつくられた基準に基づき検証することが必要になります。
③のサプライチェーン内の製品/サービスのGHG排出量報告については、まず算定や検証の目的を決定し、特に自主的な主張である場合は、その正確性、客観性、透明性を高めるため、基準の選択などが重要となります。

(塩見)
ありがとうございました。カーボンフットプリントの審査や今後の見通しについてイメージが湧きました。製品レベルの算定や第三者検証は、国際的な要請や企業ニーズが拡大していく可能性があり、橋詰さんからは、その社会ニーズに対応していきたいという熱意を感じました。このインタビュー内容が、信頼性や客観性を高める開示の参考になればと思っています。